7/6(Tue)
ワイシャツのボタンを、とめ終わった。
母の、俺を呼ぶ声が聞こえる。
そろそろ家を出なければならない時間だ。
乱暴に鞄を掴み、玄関を開けた。
暑い。
田舎だからといって、決して気温が低いわけではない。
むしろ、暑い。
都会はまあ、ヒートアイランド現象なるものがあって余計暑かったけれども。
四方を見回しても、ビルは見えない。
少し、ビル街が恋しくなった。
通学路には八十神高校の生徒達がたくさんいた。
田舎って、こんな道からみんな一緒なんだな。
『やあ、おはよう転校生くん』
教室に着くと、昨日俺に声をかけた女子生徒が挨拶をしてきた。
「…おはよ」
また俺に構うのかよ。
つか名前教えたばっかだろ。
なんだよ転校生くんって。
そう思い、若干歪んだ顔を直さないまま挨拶を返した。
俺の口から想像以上に嫌そうな声が出てしまったが、目の前の女子生徒は気にしていないようだ。
『今日、体育あるの知ってる?』
「体育?」
知らない。
初耳だ。
『そうだよ、体育。1限だよ。男子はバスケだったっけ?』
「ジャージとか持ってきてねえけど…」
『ありゃー…』
どうしようか。
つか全くそんなこと聞いてなかったぞ。
どういうことだ。
『ねえねえ』
「なんだよ」
『このままサボっちゃう?』
「は?」
転校した次の日にサボりってなんだよ。
サボり魔とかの印象は植え付けたくないんだけど。
『ねーどうするの?サボるなら私付き合ってあげるよ』
なんだその上から目線。
「いやいい、正直に言って見学してる。」
『そっかそっか!あ、じゃあ私着替えてくるから!ばいばーい!』
「あぁ」
はぁ、嵐が去ったような気分だ。
だいたい何であいつは俺に構うんだ?
意味わかんね。
そして1限、俺はゴールの横で見学をしている。
[mokuji]