7/5(Mon)

この小説は原作を無視しています。
花村君が転校してくるところから始まります。
P4主人公は登場しません。

テーマは夏。














2010年7月5日月曜日。



俺は今日、この八十神高校に転校してきた。




「花村陽介です、よろしくお願いします」


控え目に鳴る拍手に、俺は聞こえないフリをした。





「お前の席はあそこだな」



担任に席を指定され、この黒板の前という場所が非常に居心地が悪かったのでさっさと座ってしまおうと足を動かした。





席につくまでの間、コソコソと発せられるクラスメイトの言葉。


ほとんどが、ジュネスのことだった。



わかっている、わかっていた。

こうなることはわかっていた。


都会に居た頃のクラスのほうが、上辺の付き合いが多かったがまだ良かった。



きっとこれから俺はつまらない高校生活を送ることになるんだろう。





窓際の一番後ろ。



ここが今日から俺の席だ。










休み時間。



転校生にとってはお決まりの質問攻めというものが、俺には無かった。






『ねえねえ、都会ってどんなところ?』





右隣から楽しそうな声が聞こえた。



右を見れば、普通の女子が居た。





「え…と、都会?」



『そう、都会。住んでたんでしょ?』




どんなところ…と言われても。





「人が多くて、ビルだらけ?」



『なんで疑問形なの?』



けらけらと笑う目の前の女子に、俺はどう反応を返せば良いかわからなかった。


「え…いや…」





君、面白いね。
そう言われてすぐ、授業が始まるチャイムが鳴った。


俺は顔を歪め、自分の机の上に出してある数学の教科書を見つめた。













そして昼休み。



案の定、一人のお昼。


ジュネスで期限ギリギリということで破棄されることになっていたパンを鞄の中から引っ張り出す。



パンの袋を破ろうとしたとき、また右から話しかけられた。




『ねえ転校生くん』



「…なに?」



『屋上行こうよ、一緒にお昼食べよう』



「いや、いいよ別に」



『つまんないなー』



つまんなくて結構だ。

俺はここのクラスの者とはあんまり関わりたくない。





『いいじゃん、今回だけでも行こうよ』



これ以上何か言われるのも面倒なので、今回だけということで屋上に行くことにした。






『んー暑いねー』



「なんでわざわざ暑い屋上なんかに…」



『学校の屋上って、行ってみたくない?』



「まあそうかもな…」




俺がこの前まで通っていた学校は危険だからだの生徒の安全のためだので屋上には鍵がかかっていて入れなかった。


特別なことが無ければ入れない屋上で昼食をとれるというのはなかなか気分が良いものかもしれない。




『八十神高校の屋上はいつでも入れるからねー、仲の良いお友達できたら、ここで今日みたいに一緒にお昼食べるといいよ』



「ずいぶんと自由だな」



『そう?』




「ああ」





そっけなく返事を返すと、笑い声が聞こえた。



「なんだよ…」



『これが都会と田舎の違いなのかな?あははっ』



「さあな」




『うわー冷たいね転校生くん!』







呆れた目でその女子を見つめれば、また少し笑われた。









『ねえねえ転校生くん』




「なんだよ」




今度は何を聞かれるのか…。


明らかにめんどくさそうな声で返事をしてしまったが、別に後悔はしていない。



さて、次はどんな質問が来るのやら。









『名前、なんだっけ?』




「…は?」





『あ、あはは…忘れちゃってさあ』




「俺クラス全員の前で自己紹介したし黒板にも名前書いたよな?」




『ごめんごめん、私人の名前覚えるの苦手なんだよ』




「はぁ…花村陽介…」




『お!そうそう!花村くんだ!』




「お前は?一方的に絡んできてるわりには自己紹介も無いんだな…」




『あ、ごめん忘れてたよ。苗字名前です、よろしくね』



「はぁ、よろしく…」





俺が元気の無い声でそう言うと苗字はまた楽しそうに笑った。



『んー、もうすぐ昼休み終わっちゃうね。戻ろっか!』



「ああ」





長いようで、短い、転校初日の昼休みだった。








[mokuji]



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