コンビニへ行ったら、タマゴサンドを選んでいた。無意識に籠に入れた後、数歩歩いて立ち止まる。タマゴサンドが好きなヤツ、って誰だっけ?

「なー、赤崎ー?お前タマゴサンド好き?」
「いや、嫌いじゃないスけど…。なんスか?」
「やー…なんでもない」

一緒に買い物に来ていて一番近くにいた赤崎に訊こうとして、何となく止めた。
次に飲み物が陳列する戸棚を眺める。そうしたら、ドクターペッパーなるものに目を留めてああ、と一人で納得した。達海監督だ。
知らず知らずに、自分の中で大きくなっていった監督の存在。あの人、いいよな。好きだな。とただ単純に思う。
コンビニを出て、クラブハウスへ向かう途中ふと疑問が沸いた。あら?自分はホモだったのか?と。そういう意味で好きなのかなぁと考えてみて、やっぱり、好きなんだなぁという答えしか出てこない。えー、まじか。と自問自答。まっさかね、はは!と笑うと後輩に変な目で見られてしまった。「ど、どうしました?」と隣にいた世良が遠慮がちに訊いてきたので、なーんでもない!と答えたけれど怪しい目で暫く見られてしまった。



「達海さん、アイス食います?」

午後練の前。クラブハウスの住人となっている達海さんを見つけて、買ってきたビニール袋の中身を取り出した。うん食べる、くれるの?と答えた達海さんへアイスを差し出した。

「悪いねぇ。あれ、今からお昼?」
「そーすよ」
「タマゴサンド?」

訝しげに見てきた達海さんに首を傾げる。食べたいのだろうか。

「もーちょっとお昼考えたほうがいいんじゃない?」
「え、えっー!?だって、達海さんこそよく食べてるじゃないですか!」
「俺はいーの、監督だからね。でもお前選手だし栄養とか考えた方がいーんじゃねぇの?ま、人のこと言えないけどね、俺も現役の時考えてなかった気がするし」
「はぁ、」

特に食べたかったわけでもなかったタマゴサンド。何故選んだかって?達海さんがいつも美味そうに食ってたからなんだけどな。と心の中で呟いてからかじりついた。



「達海さん、」
「んー?」

食事をし終えた頃、達海さんもアイスを食べ終わっていた。グラウンドに戻るかな、と立とうとした達海さんの手を思わず掴んでしまって慌てて放すと、どした?と暢気な言葉がかかった。


「俺!達海さんのサッカー気に入ってます!」

達海さんは目を丸くした後、笑いながら頷いてくれた。

「サンキュ、丹波。お前みたいなベテラン層にそう言ってもらえると嬉しいね」

「達海さんのことも、好きです」

それこそきょとんとした顔に後悔が押し寄せる。言っちゃった。勢いだったけど言っちまった……。

「丹波、」

ぽん、と胸を押し返される。それは軽い力だったけれど、自分には何十倍も重く感じた。

「悪いな、丹波。俺、男とそーいうの興味ない」
「すみません、」
「謝んなって。気にしてないよ」

言葉ではそう言ってくれたけど、
軽蔑された、かも。
泣きそう。



先走り厳禁


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