達海の部屋の大部分を占めるベッドに悠々と横になり、気兼ねすることなくジーノは雑誌をパラパラと捲っていた。達海は達海で次節に備えて作戦を練っている。
今日はオフ。ならば2人で出掛けよう!というジーノの提案は昨日の時点で没となっていた。えー、と恋人の否定的な反応に、いいじゃないか行こうよ、と尚も食いついたジーノであったが達海の一言で丸め込まれてしまった。俺、別にお前といれば出掛けなくたっていいし。その言葉に達海の本意は面倒が半分ほどの割合(いやそれ以上)を占めていたにも関わらず、ジーノのどこまでも上向きな考えはプラスに受けとめた。タッツミーがそう言うなら明日は自宅デートだね!なんて。自宅デートってなんだ?と達海は思わなくもなかったが、わざわざ出掛けなくなったことに喜ぶ。

不意に達海は顔を上げて静かに雑誌を眺めるジーノに目をやった。

「どうしたの、タッツミー」
「んー?何真剣に読んでんのかな、って」

ジーノはクスリと笑って達海を手招きした。おいで。達海の手を取り、ベッドに誘う。2人分の体重にギシリと軋む。

「タッツミーはスペインのマドリードとフランスのパリどっちが好みだい?敢えてベルギーはどうだろう?一度行ってみたかったんだよね」
「はー?なんの話?」

これだよ、とジーノが指し示した雑誌を見る。観光雑誌のようだ。次のバカンスの場所でも決めてるのか。休む時は早めに言えよ?と言えば、ジーノは嬉しそうな笑みを浮かべ問題発言をするのだった。

「今度は君と楽しもうと思ってね」


なにを?と一瞬考え達海はすぐに首を振った。バカじゃないか?

「なに言ってるのかな、吉田くん」
「ジーノか王子だよタッツミー。言葉の通りさ!君の意見も聞いておかないとね」


聞くもなにも……。達海は頭が痛くなった。この王子さまをどうしたらいいだろうか。それに昨日の時点で、お前といれば出掛けなくたっていい(あれ、これ恥ずかしい台詞なんじゃないか…?まぁいいか)と言ったはずだ。その言葉に頷いたからこそ今日はこうして俺の部屋でだらだらと過ごしているのではないか。

「そんな時間ないでしょ」
「休めばなんとかなるよ」
「あのねー、俺は監督なの、わかる?」
「監督だって休息は必要だと思うな」
「休めるかよ」


明らかにムッと機嫌を損ねてしまう王子さまに達海はため息を吐いた。どうしたものかねぇ。

「機嫌直せよ、王子さま」

ちゅ、と頬にキスを落としてみても、誤魔化されないよと睨まれてしまう。タッツミーと行きたいんだよ。と我が儘を言われてもこればかりは仕方がないのだ。


「ジーノ、あんまりワガママ言うなよ」


さらりと絡まることを知らなそうな髪に指を入れ、撫でてやる。自分より10歳近く離れている年下の恋人はなんだかんだで可愛いと思うし、我が儘も出来るだけ叶えてやりたいが、世の中出来ることと出来ないことがあるのだ。


「いっぱい、キスしていいから」
「………いつもしてるじゃない」
「そーだけど。喜んでやるから」
「………いつも嫌がってたの?」
「…………そうじゃねぇけど……」


ハハッとジーノは突然笑い出す。もうタッツ!好き!ハグしよ!
急に明るい雰囲気になったジーノに達海は戸惑う。まぁ機嫌直ったのは良かったと内心安堵をする。王子さまのスイッチボタンは謎である。

「結局、君と一緒にいたいだけなんだよね。ゴメンね。困らせたかな?」

ジーノは雑誌をベッドの脇へ追いやると達海に口を重ねた。



つまりはそういうこと


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -