何度も懸命に誘うジーノに、首を縦に振ったのは、特に意味もなかった。飯くらい、付き合ってやろうじゃないか。初めはそんな軽いノリだった。食事は充分満足出来る物であり、空腹が満たされ次に訪れたのは心地の良い眠気。達海は、マセラティの座席に深く座りながら過ぎ行く町並みを眺めつつ目を擦った。


「ねー、俺ってこのままお持ち帰りされちゃうの?」


不意に漏れた発言に、ジーノは一瞬耳を疑った。丁度、目の前の信号は赤に色づき、ブレーキをかけると達海の横顔をまじまじ見つめた。視線は窓の外。表情は見て取れない。


「タッツミー?」

首を捻り、ニヒヒ、と悪戯な笑みを浮かべた達海の真意などジーノには理解出来なかった。思いがけない達海の言葉に固まったまま動けなくなったジーノの顔を達海はジッと覗き込んでみた。


「お前が俺のことどう思ってんのか知らねーけどな、」

達海はそこで言葉を切り、青だぜ?と前方を指差した。前の車はすでに見えず後ろでは車が詰まり、ジーノは慌ててアクセルを踏む。

「そういう意味で誘うの?違うの?」


回りっくどい男はキライよ?と達海はおどけてみせた。
ジーノは眉をひそめる。

「………じゃあ君を今からホテルへ連れていいのかい?」
「あ、やっぱ、吉田くんは俺とヤりたいの?」


なんてムードの欠片もない人だ!ジーノは心のなかで叫んだが、ふと、逆の発想が頭を掠めた。これは寧ろチャンスなのではないか。達海は少なからず自分の気持ちを気がついている。それなら、この機会を最大限活用しようとジーノは考えた。


「ボクのお願いをきいてくれるのかい?」
「うーん……ハイいいですよなんて簡単に答えらんねーだろ普通。男同士だし」


完全に否定をしなかった達海にジーノの思考はますますポジティブな方向へと突き進んだ。左折し、明らかに達海の家とは別の道を走る。それに気がついた達海だったが、何も言わずにただ車の向かう行く末を案じた。


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