「タッツミー、今夜はフレンチにしようか?」


先日眼にした男はやはりというか、一軍に上がってきた。しかし、練習への参加も相変わらずマイペース。コーチ陣は何度も注意をしていたが、あまり効果はないようでいつも最終的には肩を落とすことになっていた。そのせいか、試合にもスタメンではなくベンチが多い。本人は何も思っていないのか、表情は変わらない。たまに試合に出れば結果は必ず出すので、文句を言うにも言えない状態になっていた。そんな誰もが扱い辛い男に達海は、何故だか懐かれ、只今毎練習後すでに恒例となっている食事のお誘い文句に眉を寄せていた。


「毎回言ってっけど、俺そーゆー堅いとこ好きじゃないの。今日はチャーハンが食べたい気分だし」
「そうかい?じゃあ中華にしようか」
「だーかーら!違うっての。今日は疲れたし早く寝たいから行かねー」
「残念」


わざとらしく肩を竦めてみせるジーノに背を向け、達海はロッカールームを後にした。


「お疲れ、タッツミー」
「止めてよ松さんまで」


次いで出てきた松本は達海の横に並ぶ。
タッツミー、という王子さまが勝手に付けたあだ名は最近では馴染んでいた。


「しっかし、あのワガママ王子さまを手懐けるとは!さすが達海だな。人気者はツラいね」
「………たすけてよ」
「いいじゃねぇか、食事。アイツの奢りだろ?」
「なんつーか、次元が違う。アイツいくつだっけ?まだ若いよね?どこからの金か知らねーけどいっつも高そうなモンで些か、申し訳がないというか。」
「達海にも遠慮というもんがあったのかー」

笑った松本に対し、俺だって心痛めますー、と達海は口を尖らせた。


「でも、珍しいんだぜ?アイツ、サテライトの中じゃあ、野郎とは口もききたくないような近づけない雰囲気あったらしいしよ。これ、同じサテライト上がりの奴が言ってたことなんだけど」
「じゃあなんで俺に構ってくるのさ。アイツウザい」
「うーん、好きだから?」
「は?」
「好きなんじゃねーの?お前のこと」
「冗談じゃないよ」


口では否定しながら、今までのことを考えてみる。が、達海にはさっぱり理解が出来なかった。やっぱり考えるのなんて止めよう。時間の無駄だ。松本の会話の話題も次にシフトしていた。



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