「おや、可愛がられているねぇ」

隣で歩くジーノがクイッと指を指す。ほら、真っ赤になっちゃって可愛いワンコだ。ははっ。と愉快にジーノは笑った。
指の先には椿がいた。椿のファンであろうか、数人の女性が取り囲みサインをねだっているようだった。





練習が終了して解散を告げれば選手たちは各々帰路につく。そんな中、監督っ!と俺を呼ぶ声に振り返る。椿が駆け寄ってきた。見えない尻尾が左右に揺れているようだ。かわいい。
肩を並べながら歩く。

「お疲れっす」
「うん。……あ、…そう言えば、椿くん。あーゆー子がタイプだったんだー」
「………?なんの話っすか、?」
「んー?練習始まる前、女の子に囲まれて真っ赤になっちゃってー」
「ちがっ、」
「へー。ふーん。やっぱり若い男の子だもんねー。髪の長い子が好みだった?」
「…ッ、監督ッ!」

ガシリと両腕が椿に掴まれた。椿は首を左右に振り、違うんですっ!と何度も繰り返す。

「椿、痛い。」
「あ、…すみま、せん…」
「冗談だよ。ちょっと意地悪しすぎたな」


髪をくしゃりと撫で回してやる。顔を上げた椿の黒い瞳が潤んでいたが最後の言葉に安心したように、椿の表情が明るくなった。

「よ、よかった」
「でーも!」


俺が椿を抱き締めれば、うえっ?と変な声が上がった。顔を合わせればさっきよりもっと赤く染まった椿の頬。それに、軽く口づけをしてやる。


「腕掴んで引き留めるんだったら抱き締めるくらい、しろよな」

椿は目を丸くしたあと小さくスミマセンともう一度呟いた。
だからぁ、それ不正解。
身体を離そうとしたら、グイっと頭を椿にとられた。そのまま、椿に唇を重ねられる。


「……ン、…椿、ここ、外、」

「俺、監督しか好きじゃないです」

真っ直ぐな告白。いつも、緊張をしてか、なかなか言ってくれない言葉。サラリと出てきた言葉にどうやら自分でも驚いているらしい。男らしさから一転またいつもの可愛らしい椿に戻ると、あー、えっと、と次の言葉を探し始める。


「えと、監督から見て、そう見えたなら謝ります。で、でも…監督も、」
「俺も?」
「お、王子と仲良い、じゃないスか。さっきも、一緒にいて…。俺、嫌です」


驚いた。しっかりと独占欲というものがあったのね、この子にも。


「……監督、かわいっす」

不意討ちに椿の新たな一面をみて思わず照れ、熱くなった顔を隠すように椿の肩に額をつければ、椿からそんな言葉が漏れた。お前の方が可愛いっての。




両成敗


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -