「なんだその顔」

愛車を走らせて真夜中、愛しい人の元へ向えば、第一声は至極失礼な言葉をかけられた。暗い室内にチカチカとテレビ画面の明かりだけが光る。散らかった部屋に有無を言わせず踏み込んで、タッツミーを抱き締めた。床に座っていたタッツミーが、なんだっ!?と声を上げる。それから、ポンポンと子どもをあやすようにボクの背を叩いた。

「どーしたよ。なんかあったか?」
「……別に」

こういう時、彼は不思議と優しい。いつも素っ気ない態度をとるくせにね。
2人揃ってベッドに身体を倒し、口づけを交わし合った。







「んっ、なに、…ッ」

片足の付け根から腿を通り、脹ら脛、足首までを撫でればタッツミーは驚くほどビクンと身体を揺らした。そうして、内腿に唇を落とし、ちゅ、と吸えばタッツミーから甘い声が上がる。

「あ、ぅ、なんか、へん…」
「何が?」
「おま、えっ…っ」

そうかな?首を傾げてみせても、そうだよ、と唇を尖らせる。そんな彼の唇に噛みついた。

「ん、ぐ、んう、うっ…はっ、ああアっ」

腰を落として内壁を擦り、奥へ奥へと沈めばそれに合わるように上がるタッツミーの声はなんとも自分の欲を掻き立てるのだ。熱い。溶けてしまいそう。タッツミーの性器に触れて扱いてやれば強度を増し、ぐちゅりと熱を吐き出した。

「…ジーノっ……あ、もう、ムリだって、ああッ、んアアっ」
「ふふ、君は、ホント可愛らしいよ…っ」







テレビの画面の中で行われていた試合はもうとっくに終わっていたらしい。黒い画面が無情に表れている。簡単に事後処理を済ませていそいそと2人して布団に潜った。一人用のベッドに成人男性2人は些か厳しいけれどその分タッツミーに密着出来るので、この小さい部屋でのセックスは嫌いではない。

「くすぐったい、」

タッツミーが体を縮めた。仕草がなんとも可愛らしくて笑えば、頬をつねられた。

「手、止めろよな。なんかその動き、ヤラシイ」

タッツミーの足へと伸ばしていた手首を掴まれて、強制終了されてしまう。ムッと顔を歪めれば、ため息を吐かれてしまった。

「なんか言いたいこと、あんだろ?」
「流石タッツミー。ボクのことをよくわかってくれてるよ!」

愛されてるって思っていいのかな?と言えば、あーはいはい、なんて気のない返事が返されてしまうだけだったので仕方ない、ボクの感じたありのまま、つまりタッツミーの現役時代のプレーを観て興奮したこと、それからタッツミーが脚を壊してピッチに上がれなくなった時を想像して怖くなったこと、ETUに戻ってきたタッツミーの心中を考えたら、居ても立っても居られずマセラティを走らせてきたことを話した。ただ、タッツミーを抱き締めたかったのだ。
しばらく彼は黙って聞いていた。が、聞き終えるとふぁ、と欠伸をしてなんとも拍子抜けしてしまった。


「ちゃんと聞いてくれてた?」
「うん」

不意にジッとタッツミーがボクの顔を覗き込んできたので思わず照れてしまう。すぐに、視線を外してしまって残念だと思ったのも束の間、タッツミーの腕がボクの背にまわって、抱き締められた。

「観なきゃ良かったのに」
「えーなんで?」

ボクはね、君のことが少しでもわかった気がして嬉しいんだ。大抵の場合過去にこだわらないボクだけれど、今回は君を知ることが出来てスゴく嬉しかった。

「タッツミー、ボクも君とプレーがしたかったよ。一選手として。きっと楽しかっただろうね」
「俺はヤだね。お前守備やんねぇし。走んないし」
「ふふ、王さまの命令は聞いちゃうつもりだよ」


胡散臭いね、なんて鼻で笑うタッツミー。そのあとは口づけで誤魔化して、眠そうなタッツミーの髪をくしゃりと撫でた。


「ジーノ、ごめ、ねむい」
「うん、おやすみ。」


夢の中だけでも、君とフットボールしたいなぁと思いながらボクも重い瞼を閉じた。




ダ-カーポ
da capo



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