2014/10/25 00:27


「女だからって甘く見ないでくれませんか」

そう言って真っ赤な血で染まった鉄パイプを肩に担いだ彼女に俺は背筋がゾクッとした。


“問題児達(又は怪物一期生)”であるサカズキ、ボルサリーノに次いで新たに“問題児(怪物)”が俺の後輩――つまり二期生として海軍訓練学校に入学した。
ソイツは入学の面接時に面接官を殴り、入学時に他入学生をボコボコにし相手を門を潜る前に退学にさせ、割り振ったクラスの奴等を全員その日に服従させたという、よくそれで入学出来たと言いたくなる問題を起こしている。
こんな大事を起こせば先輩達、まぁ俺達の代で黙っていない奴等が出てくる訳だ。
入って早々随分ハデに暴れてるじゃねーか?とか、調子こいてんじゃねーぞ?とか。
やんちゃなだけなんだから放っとけば良いだろと思うが口に出せないのはソイツ等が強い上に親が本部の上層部に居るからだ。
少しでも楯突けば停学、最悪……退学だ。
え?ソイツはサカズキとボルサリーノにはどうしてるって?……察してくれ。

はてさて。そんな俺なんだが偶々訓練学校の裏側を歩いていたら偶然にも“問題児(怪物)”を囲んでいる同期を見付けてしまった。
これは先輩らしく前に出て助けに行った方が良いのか…と考えたが俺は弱い、その上奴等は見えるだけで十人以上は居る。
勝ち目が無いと確信したので気配と音を消して先生を呼びに行こうとしたのだが衝撃敵な台詞が聞こえ足が止まってしまった。

「くせー息撒き散らすんじゃねーよ大気汚染製造機共」

決して高いとは言えない声で同期達に辛辣な言葉を言い放ったのは――二十歳になったばかりであろう小柄な女性だった。
囲む同期達の隙間からちらっと見えた彼女は深目に被った海軍帽を被っており顔が見えないが声からして凄く不愉快そうである。
彼女の言葉に苛付いたのか取り巻きの一人が彼女の新しい制服の胸倉を掴む――と思ったらその手が関節的にあってはならぬ方向へと曲がっていた。
瞬間。上がったのは男達の野太い声と悲鳴と彼女の手に握られた鉄パイプが骨ごと肉を打ち砕く音だった。
一人、二人、三人…顔がひしゃげる者、前腕が曲げられ中の骨が飛び出た者、屈伸が前にではなく後ろへと曲げられた者。
まるで人形で遊ぶ無邪気な子供の様で恐ろしいが―――楽しそうであった。

(何秒、何分、何十分。俺はどの位その光景を見ていたのだろうか。)

そして…遊びは終わった。
オモチャに飽き途中で放り投げた子供と一緒で唐突に「お人形遊び」という「惨劇」が終わった。
俺の目から見えたのは後ろ向きの彼女が留め具の隙間から無造作に一つに纏めた黒髪をゆらゆらと馬の様に揺らしながら転がる人形…主犯格である同期の頭を踏んだ。



ここまで。

最強じゃない。
だけど物凄く強い女性。
そんな女性が好きです。
守られる女性も大好きですよ。




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