どうして目の前の彼は怒っているのだろうか

沈黙が続く保健室で2人向かい合いながら考える。心当たりがないが、この雰囲気の中、立ち上がって帰る勇気は私にはなかった。

忍足くんがきた次の日、保健室に放送で呼び出され向かうと、ムスッとした跡部くんが座っており、一瞬ドアを閉じたが、すぐに引き戻された。そして、いつも私が座っている椅子に跡部くんが座り、その向かい側の椅子に座らされた。座って呼びされた理由待つが、何も言われることなく時間が刻々と経っていく。なんだろう、もう私今日係じゃないから早く帰りたいんだけど。と思いながらも、目の前の彼の雰囲気にそれを言い出すことはできなくて、ただ待った。

「・・・昨日」

やっと沈黙から跡部くんが切り出したと思ったら、思わぬ言葉に言葉を詰まらせる。

「昨日、忍足に何を言われた」

「え?」

腕を組みながら話す彼に首を傾げる。何って言われても、

「別に何も」

としか言えなかった。よくわからないけど、ただ保健室に来て、私をじっと見て、ろくに話さず去って行ったのだ。何を話したといわれても何もないとしか言えない。

「嘘つくんじゃねえ、何か話しただろう」

「いや、だから何も」

そう答えるも、彼は納得せず、グッと睨まれる。ビクッと肩を揺らす。跡部くんのあの目に睨まれると、なんだか他の人に睨まれるよりも怖い。なんていうか眼光が鋭いっていうのかな、何も言えなくなる。そんなことに気づくことなく、彼は私の言葉を待っているようだ。

「・・・ただ、跡部くんが最近機嫌がよさそうだ、と」

何か言わないと納得しなさそうな彼にただ唯一話していたことを伝える。というか、このことしか話していないような気がする。だって、ほとんど話していないんだもん!

「他には」

まだ疑うように聞いてくる彼に必死に首を振る。

「それだけか」

何度も頷くと、はぁっと大きくため息を吐き出した。

「・・あの野郎」

チッと舌打ちを打たれる。一体何を言われたのだろうと思いながら、様子を伺う。きっと忍足くんに昨日のこと何か言われたのだろう。嘘か本当のことか、何を話したのかは想像できないけど。

「みょうじ」

普段の表情に戻った跡部くんに安堵しながら、視線を向ける。

「忍足に何を言われたかはわからないが、あの野郎のいうことは信じるな」

信じるなって、何気にひどいなと思いながら、昨日の忍足くんの様子を思い返すと、あながち間違いではないと思い、頷く。私が頷いたのを確認した跡部くんはもう一度ため息をはき、立ち上がった。もしかして、用事ってそれだけだったのか?えええ、と心の中で思いながら、去っていく彼を見つめる。

「それとだ、」

ドアの前で一度立ち止まった彼は、思い出したかのように振り返る。

「あんまり男と2人っきりになるなよ、勘違いされるぞ」

そう言って出ていった彼に固まる。



え、それ、跡部くんが言う?





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