跡部くんに不審者扱いされたあの日から廊下で彼とすれ違う時、目があって笑われている。笑われているというのは私の気のせいかもしれないが、目が合っているのは気のせいではないと思う。
「跡部くんのこと好きになっちゃったんだ?」
「なっ?!そんなわけないじゃん!」
私の反応を見て笑う先生に口を尖らせる。
あんな人好きになるわけないじゃん。お金持ちのお坊っちゃんで、イケメンで、頭が良くて、人気があって、好きになったって無駄だろうし。
「そうなの?彼は貴方が気に入ってるみたいだけど」
「あれはただからかっているだけでしょ」
「それを気に入っているっていうんじゃないの?」
「いいじゃないの、彼かっこいいし」という先生に小さくため息をつく。
今まで跡部くんと関わりのなかった私だけど、急に関わるようになって少しドキドキしてしまうことがある。だけど、跡部くんと話すのは保健室で少し話すぐらいで、廊下では目が合うぐらいだ。きっと今はただ興味があるだけで、興味がなくなったら目が合うこともなくなるのだろう。
「先生、生徒で遊ばないで下さい」
「別に遊んではないけど?」
クスクス笑う先生にもう一度ため息をついた。
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