前の出来事から1か月

当番のため保健室へ行くと、先約がいた。

「・・・先生ちょっと思い出したのでちょっと今日遅れます」

「おい、待て」

扉を閉めようとしたが、その声に腕が止まる。

「おい、逃げんな。今日の用事はお前だ」

その言葉に心の中でガクッとあきらめた。そっと彼に目を向けるとじっと真剣な目と合ったため、視線を反らし近くの机に鞄を置いた。少し離れたところに座ると私の方に彼は向きを変えた。

「最近、俺を避けてるだろう」

いきなり本題に入った彼に、ちょっとオブラートに包むって言葉をと思ったがそんなことを私が思っていることを露知らず彼は続ける。

「俺と廊下で会った時の態度があからさまに不審者だ」

「不審者って!?」

「あらぬ方向で方向転換したり、急に体操し始めたり」

「あーあーあー!あんまり言わないで!」

「・・・不審すぎて見ていられない」

大きくため息を吐いた彼。うわぁ、すごく呆れられてる。「ごめんなさい」と小さく返すと「いや、そうではなくてだな」と謝った私に焦っていた。

「俺が何かしてしまったかと、思ってな」

少し気まずそうに言う彼に大きく首を振る。

「いや、そういうわけじゃなくて、その」

前に保健室で隠れて聞いていたことが気まずくて顔を合わせにくかっただけなんだけど。と思うが、そんなことを気にしているのは私だけで彼は何とも思っていないのにわざわざ言うのも気まずい。

「みょうじさんってば」

私と跡部くんが沈黙しているのを見ていた先生が「先月のことよね?」と空気を読まず言ってきた。ほんと先生空気読んで!と目を向けるが、「ああ、あれか」と跡部くんは冷静に言った。

「あれを気にしていたのか」

「うん、まぁ、そうです」

「別に気にすることじゃねえだろ」

「そうだけど、悪いことしたなと思って」

「悪いこと?何がだ」

「いえ、なんでも」

本当に跡部くんは気にしていないようで、詳しくは言わないでおこうと跡部くんの反応を見て決める。

「はぁ・・・まあ、嫌われているわけではないならいい」

「え?」

「じゃあ、部活に戻る。邪魔したな、じゃあな」

と去っていく跡部くん。あっさりと去っていく彼の背中を見ていると

「そういえば」

立ち止まり、顔だけこっちに向く。

「案外可愛かったぜ、飛び跳ねたとき」

いじわるそうに笑って再び歩き始めた跡部くん。姿が見えなくなってから私は思わず顔を手で覆った。

「先生、あれっていじめ?」

「そうね、面白がっていたわね」

笑い事じゃないよ、もう!




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