「先生、暇です」
「まだ来たばかりでしょ」
保健室に来て30分、何もなくてぼやくと先生に呆れられた。だって、テスト期間が終わったばかりで特に急ぐ宿題がないし、他にすることもない。私の部活は今日は休みの日だ。特にすることもないため、先生に話しかけると先生はしなければいけない仕事があるみたいで、相手にしてくれない。保健室をうろうろしたり、外を眺めたりしていたけど、それも飽きてきて、先生にベッドに横になっていていいか聞くと、誰か来るまでいいと言われ横になる。目をつぶっていると、自然と眠りに入った。
どのくらい眠りに入っていたのだろうか、少しずつ眠りから覚めてきて、カーテンの外から誰かが話しているのが聞こえてきた。
「本当にマメね」
「いえ、そうでもないですよ。これも仕事ですから」
「仕事ってあなたまだ中学生よ」と笑っている先生と交互に聞こえてくるのは聞き覚えのある声だ。「生徒会長ですから、このくらいのことは把握しておかないと」と先生と淡々と対等に話しているのは跡部くんだ。生徒会って保健室のことも把握しているのか、すごいな。もしかして、前に跡部くんが来ていたのは生徒会での用事だったのだろうか、とか思い返す。そういえば、と先生が思い出したかのように話し始める。
「跡部くんってどんな子が好きなの?」といきなり話を振った。ええ?!とカーテン越しにびっくりするが、好奇心の方が勝ち、耳を澄ます。
「・・・いきなりなんですか」
「いや、跡部くんみたいな子ってどんな子が好きなのかなと思って」
楽しそうに聞く先生の声とは反対に呆れて息を吐きだすのが聞こえる。
「そんなこと聞いて俺が答えると思ったのですか?」
「ううん、思ってないけど」
「はぁ...」
さらに大きなため息が吐かれる。
「ならそんなくだらないこと聞かないでください」
「けど、もしかして答えてくれるかなと思って」
簡単にあきらめる先生にもうちょっとそこは頑張ってよ!と聞き耳を立ててながらガクリと肩を落とす。聞きたかったなー、跡部くんっていつも騒がれてるけど、特定の女の子と噂とか聞かないし、そんな話もでないから知りたかったのに。
「今日は休んでいかないくて大丈夫?」
「はい、気づかいありがとうございます」
書類をトントンと机で整える音が聞こえてきた。もう帰るのかなと思っていると、
「あの子大丈夫かしら?」
と先生が言った。「あの子?」と跡部くんが返す。椅子が動く音が聞こえ近づいてくる音が聞こえたため、目をつむる。カーテンが動く音が聞こえ、息を殺す。しばらくの沈黙の後「はあ...」とため息があがる。
「ハメたな?」
「ううん、そういうわけじゃないよ。今思い出しただけ」
「悪趣味だな」
と呆れ声で話す彼。「じゃあ、俺戻ります」と扉を引く音が聞こえ、「みょうじさんによろしく伝えてください」と扉を閉めた彼。去っていく足音を確認した後、ベッドから飛び出て顔を出す。
「先生、私起きてたってばれてた?」
「たぶんね」と。
ああ、もう先生の馬鹿!
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