次の月に替わり、また当番の日が回ってきた。
その日、先生は会議で一時間ほど保健室を空け、私は一人で宿題をしながら保健室で過ごしていた。保健室で過ごし後30分で当番の時間が終わるという所で扉が開いた。扉の方に目を向ける。「あ!」とお互いに固まる。

「先生は?」

保健室に入ってきたのは同じクラスの向日くんで膝を擦りむいたようだ。

「今、会議中なんだ。どうしよ、私でよかったら消毒するけど」

「できんのかよ?」

「そのくらいできます!たぶんだけど」

お互いに笑いながら立ち上がり、消毒液と綿花を手に取る。椅子に座るように促すと向日くんは礼儀正しく座った。彼の前に私も座り、綿花を水に少しつけ傷口に当てると、「いてっ!」と体が一瞬飛び跳ねた。「ごめん」と一瞬手を止めると「いや、俺こそしてもらってるのにわりぃ」を座りなおした。消毒液をかけ、綿花でふき取る。その度に我慢している向日くんに少し笑ってしまった。

「笑うなよ!痛いんだよ、仕方ないだろ!」

「ごめん、ごめん」

「悪いと思ってないだろ!」

「いや、可愛いなと思って」

「は?意味わかんねぇ!」と少し顔を赤くしている彼にさらに可愛いなと思ってしまった。

「みょうじって保健委員だったんだな」

「そうだよ、今更知ったの?」

「じゃあ、お前俺の委員会覚えてるのかよ」

「ううん、知らない」と返すと、「一緒じゃん!」と2人で笑う。それからしばらく保健室で2人で話していると、再び扉が開いた。先生が戻ってきたのかなと思って振り向く。

「向日」

扉の所には少し眉間に皺を寄せて腕を組んでいる跡部くんがいた。

「あ、跡部!」

「なかなか帰ってこねえと思ったら、」

「いや、別に遊んでたわけじゃないぜ?ほら!」

膝の絆創膏を見せながら弁解している向日くん。まぁ、膝の手当はとっくに終わっていたけど、向日くんのためにそれは言わないでおこう。向日くんの言葉に大きくため息をついた跡部くんは「終わったなら、さっさと戻れ」と言い、「はいはい、わかったよ」と向日くんは立ち上がり、「みょうじありがとな!じゃあな!」と保健室を出ていく。向日くんが出ていったのを確認し、跡部くんは小さく息を吐き私の方に振り返った。

「みょうじ、向日が世話になった。すまない」といい、「またな」と綺麗に口角を上げて去っていった。

さすが跡部くん、去り方が様になる。







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