「みょうじさん、ちょっと待っていてくれる?」

下校の時間になり、支度をしていると、先生にちょっと待っていてもらうように言われた。鞄を持って椅子に座って待つ。もう少しで日も暮れそうだなーっと外を眺めていていると、ドアが開いた。先生が来てやっと帰れると立ち上がって振り向く。
何故かユニフォーム姿の跡部くんが息を切らして立っていた。
目を見開き、固まる。どうして、いるんだろう?と思いながら、あ、そうかここは保健室、怪我でもしたのかなと思うが、膝や腕に怪我は見当たらず、けど、わからないけど跡部くんは近づいてきた。少しずつ近づいてくる跡部くんに後ずさりする。後ずさりする私に気にせず跡部くんは近づいてきて、とうとう壁とぶつかった。少し私と距離を置いて止まった跡部くんは私に視線を合わせず、けど何も言わなかった。ここにきたってことは何か用事があるのだろう。鞄を抱えたまま、じっと彼を見つめた。

「みょうじ」

しばらくして話を切り出した。

「好きだ」

照れくさそうに真剣に言った彼の顔は見たことないほど真っ赤だった。

「忍足にわかりやすすぎだと言われ、からかいすぎたら嫌われるって言われたから、我慢していたんだが、もう我慢ならねえ」

唇を噛みしめた彼は一歩私に近づく。

「みょうじが俺を見てるのに無視なんかできるかよ」

覗き込むように屈んだ彼と目が合う。

「お前の視線を俺で独占したい。保健室だけでなく、廊下でも、教室でも、外でも」

顔を真っ赤にしながら跡部くんに言われて、思わずその場でしゃがみこんでしまった。



ああ、きっと私も顔が真っ赤だ。





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