本当の気持ちは

丸井くんと付き合いはじめて2週間。連絡を取りながら、少しずつ丸井くんのことを知っていく。お菓子作りが好きだったり、数学が苦手だったり、部活で疲れてメールの途中で寝てしまったり、思っていた通りのような、意外なような丸井くんの一面を知る。いつも遠めで見ていた丸井くんも思っていたより普通の高校生なんだなぁと思ったり、まあ普通そうか。そんなになんでもパーフェクトですって言う人はいないよね。

今日はミーティングだけだから終わったら一緒に帰ろうという丸井くんを待っている間、校内をぶらぶらと一人で歩いていると、普段空いていない屋上の扉が少し空いているのを見つける。興味本位で扉をそっと開いてみると誰もいなくて、そっと屋上に出た。初めて出る屋上は校内と違って、気持ちのいい風が吹いていて、綺麗な空が広がっていた。屋上の真ん中の方まで歩いていったが、本当は屋上に出るのは禁止されているから、長居すると誰かに見つかると思い、戻ろうと体の向きを変えた。振り返ると、屋上の入り口の横の壁に誰かが座っているのを見つける。もしかして先にあの人が内緒で屋上に入っていたのに、私が勝手に入ってきてしまって邪魔をしてしまったのかもしれない。さっさと戻ろうとしたが、すれ違う直前にその人の方に一瞬視線を向けた。

「・・・ああ、」

「・・・どうも」

ちょうどその人と目が合ってしまった
いつものようにちょっとけだるげな仁王くんで、無視もよくないなと思って軽く頭を下げる。けど、そういえば、

「・・・仁王くん、ミーティングは?」

丸井くんと同じテニス部だよね、と思い、思わず言葉に出してしまい、口をふさいだがそのころにはもう遅かった。

「・・・さぼった」

ぷいっとさっきまで見ていた方に視線を戻し、ぼーっとし始めた仁王くんを見つめる。さぼったって・・・だめじゃん。と思ったが、私が口を挟むことじゃないか。

「そっか」

それだけを返して、屋上を出てしまおうと足を動かそうとした。

「・・・ぶんちゃん待っとるんか」

「え、うん」

「そうか」

さっきと同じ方向を向いたまま、話しかけてきた仁王くんに動かそうとした足をとどめる。

「・・・ぶんちゃんはええやつじゃ」

「う、うん」

「おまんもええやつじゃ」

「え、あ、ありがとう」
「これからもよろしくしたって」

最後にチラッと視線だけ私に向けて口角を上げた仁王くん。「こ、こちらこそ」

よくわからないけど、勢いよく仁王くんに頭を下げて、屋上を出ていった。

屋上を出て、勢いよく階段を駆け下り、教室まで戻る。教室には誰もいなくて、自分の関井に着くとへなへなと机に頭をつけた。


ああ、だめだ、仁王くんと初めて話した。
やばい、ものすごく嬉しくて・・・泣きそう。


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