誰も嘘なんてついていないつもり

「なにまた馬鹿なこと言ってんのよー」

いつもと同じように騒がしい休み時間

「だから、その時あんた言ったじゃん!」

「言ってないし!」

「いつの話してるのよ」

「わかんない」

体育の授業が終わって更衣室からクラスへ戻ると、男子たちが先に着替え終わって戻ってきていた。

「雅治ー、部活終わるの待ってるからさ、帰り一緒にアイス食べに行こうよ!」

「いや、今日はやめとく」

「なんでよー」

窓際で隣のクラスの女の子と話している仁王くんが目に入る。

「うわ、リア充」

「目が痛い」

「あんたたち大丈夫?」

「もう私だめだ、心が折れた」

「死なないで、私がいるじゃない」

「・・・っ!」

「何やってんのあんたたち」

イチャイチャしている光景を見て、ふざけている彼女たちを見て笑っていると、一瞬仁王くんと目が合った。けど、目が合ったのは一瞬で目を反らされた。馬鹿なことしてるって思われたのだろうか、いや、その前に興味がないのかもしれない。そんなことをしている間に、チャイムが鳴った。


国語の先生が入ってきて、前の授業の続きの現代文が始まった。体育の次の授業というのは、少し億劫だ。体育で少し体が疲れているのか、あまり頭に入ってこない。しかも、現代文は教科書を読んで先生の話を聞くことが多いから、ついウトウトとしてくる。だめだ、今日も眠気に負けそう。頑張って目を開けないと

「みょうじ」

「っ!」

「さっきの続きから読んでくれ」

眠気と戦っていると名前を呼ばれた。一瞬で目が覚めたけど、さっきの続きというのがわからない。どこまで授業が進んでいたのか黒板を見て、ここからでいいのだろうかと考えていると、コンコンと隣の机がなり、目を向ける。

「ここ」

小さな声でシャーペンで教科書を指してくれていた。自分の教科書で確認し読み始める。

「はい、そこまで。この文節だが」

読み終わり、ホッと息を吐き出す。隣に目を向けると、丸井くんはいつも通り肘をついて黒板を見ていた。軽く机を鳴らすとチラッと彼は私の方に目を向けた。

「ありがとう」

先生に聞こえないように小さな声で言うと、彼はよく友だちに向けている笑顔を向けてくれた。その笑顔を見て、やっぱり丸井くんはイケメンだなぁと感心していたのだけど、黒板にまた視線を彼が戻したため、私も授業に戻ることにしたのだった。



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