真の花束を君に

走って部室に向かったが、その時にはもう丸井くんはコートに入ってしまっていた。一度教室に戻り鞄を手に取って、丸井くんが部活を終えるのを待った。部活が終わり部員たちが部室に戻るのを確認すると立ち上がり、帰る生徒たちからわかる場所に行き、壁にもたれかかって丸井くんを待った。

「みょうじさん」

声のする方向に顔を向ける。視線の先には、衣服の乱れた状態の丸井くんが立っていて、私が丸井くんの方を向いたのを確認すると走ってきた。

「え、なに、どうしたの?」

部活の間に話したい旨を書いたメールを送っていたのだが、メールを見てくれたのか、どうやら急いできてくれたみたいで、いつもきれいにセットしてある髪は乱れていて、制服のボタンも全部止め切れていない。そんな丸井くんを見たのは初めてだったため、思わずクスリと笑ってしまった。

「え?何?」

突然笑い始めた私の様子を見て、何に笑っているのかわからない丸井くんは戸惑っている。本当丸井くんはいつも自然で正直だ。なのに、その中に優しさがある。今だって、別れたはずの私のメールなんて急用でもないし、無視をしたっていいくらいなのに、わざわざ急いできてくれた。本当に優しく温かい人だ。

「で、どうしたの?何かあった?」

他の男を好きになった元恋人のことなんて心配しなくてもいいのに、今までと同じように接してくれている。そんな丸井くんに頬が緩んだ。

「私ね、丸井くんのこと好きです」

「え?」

「丸井くんのことが好き」

「ええ?なに、どうし、仁王は」

「仁王くんも好き」

「は?」

「けど、仁王くんは憧れというか、丸井くんとは違う。私は丸井くんが好きです、私が一緒に居たいのは丸井くんです。好きです、丸井くん」

「え、え、ちょ、ちょっと待っ」

私の言葉に顔を片手で覆って、うつむいてしまった丸井くんは、何も言わずその状態で固まってしまった。

「丸井くんは...私のことどう思ってる?」

もう遅かったのかと少し不安になり、少し小さな声になる。

私の言葉に顔をあげ、覆っていた手をそっと外す。顔は今まで見たこともないくらい紅潮していて、今まで見た中で一番好きな笑顔になった。

「そんなの当たり前だろぃ」





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