「跡部様の幸せってなんだろうね?」
そんな話がこの前私たちの話題に上がった。話の流れとしてはただの私たちの休み時間のたわいのない話である。面白いことないー、私もない、幸せになりたい、私もー、どうしたら幸せになれるんだろうね、わかんない、てか幸せって何、わかんない、跡部様の幸せって何だろうね、とそんな話から出てきたのだ。

「で、何なの?」
「そんなこと聞きにきたのか」
「だって、気になったんだもん」

そんな休み時間の他愛ない話題を跡部にふった私も私である。

「そんなの俺も知らねえよ」
「えー、あれじゃないの?テニスで勝った時とか」
「それは幸せじゃねえだろ。普通嬉しいとかだろ」
「じゃあ・・・お小遣いをもらった時とか?」
「お前な…」
「女の子たちに『キャー!跡部様―!』って叫ばれる時とか?」
「・・・」
「『スカスケとかイカス―!』って言われたり?」
「…お前が俺のことをどう思っているのかよく分かった。そこに正座して頭を差し出せ」
「やだ」

冗談だってと返すも、眉間によった皺は消えない。笑っちゃいけない、いけない。

「じゃあ、幸せって何なの?」
「そんなの俺だってわかんねえよ。わかったとしてもお前たちのと対して変わんねえよ」
「そんなわけないじゃん。だって、天下の跡部様だよ」
「天下のってな、馬鹿にしてるだろう」
「してない、してない。じゃあさ、跡部は何が楽しいと思うの?」
「そうだな、例えばお前とこんな風に話していたりだな、  照れるな馬鹿」
「だってー」
「まぁ、あれだ。あいつらとテニスをしていたり、生徒たちが挨拶をしてきたり」
「生徒たちって先生か!」
「茶化すな」
「他には?他には?」
「まぁ、こんな他愛もない話をしたりとか、何の気なしにしていることが思い返すと楽しいって思うわけだ」
「そういうわけだ」
「…聞く気あんのか」
「あるよ、マジと書いて本気と読むほど」
「・・・」
「嘘だって、照れ隠しじゃん。だって、マジで考えてくれるとは思わなかったんだもん」
「…フン」
「照れてんの?」
「んなわけ、ねぇだろ」
「ねえ、ねえ、跡部」
「あーん?」
「私もさ、幸せだよ」
「何がだよ」
「跡部とこうやって話してるの」
「…フン」

いつもみたいな余裕ぶった笑みに頬が赤味がかっていたように見えるのは、窓の外で沈み始めた夕日のせいなのか、冷え始めた空気のせいか、それとも...。

I think so.

あなたと過ごせる、それは私の幸せでもあるの



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