「もうそろそろ来る頃とは思っていた」

授業が終わってしばらくして急に隣の柳くんが独り言を言い出したものだから、びっくりして振り返る。私が思っていた通り柳くんの周りに話し相手と思われる相手はおらず、首をひねる。しかし、柳くんの視線の先はまったく別の方向を向いていたため、私も柳くんと同じ方向に振り返って、視線の先を確認した。

「やあ、蓮二」

「休み時間にすまない」

教室の入り口からこちらに向かってきているのは、柳くんと友だちの他のクラスの幸村くんと真田くんだった。この2人は柳くんと同じテニス部で、1年の頃から有名だ。なんていっても、柳くんと幸村くん、真田くんは1年生の頃からテニス部のレギュラーで、この3人がいたから全国制覇を果たせたといってもいいくらいらしい。ちなみに、この3人で三強というらしい。そのくらいこの3人はこの学校でも有名なトリオなのだ。

なるほど、柳くんのさっきの独り言はこの二人に向かって発したことか。納得した後、再び視線を彼らから離し、授業の支度を始める。

「最近、蓮二が休み時間にあまり来ないからどうしたのかと思って見に来たのだけど」

「そんなところだと思っていた」

幸村くんに言葉に、少し笑みを浮かべながら柳くんは返事をする。

「なるほど、そういうことか」

そう言ってフフフと笑い始めた幸村くんに、真田くんは首を傾げ、柳くんは少し眉毛を下げた。

「席替えいつしたんだっけ?」

「2週間と1日だ」

「ふーん、で進歩状況は?」

「それはまだ答えられないな」

「蓮二にしては珍しいね」

「こればかりは相手がいる以上、予定通りには進まないからな」

「・・・何の話をしておるのだ?」

2人で話を進めてしまっているようで、隣にいる真田くんが首を傾げたまま話に入れずにいる。

「真田にはまだ内緒だよ」
「内緒だ」


そう言って、顔を見合わせて笑う2人に、真田くんはさらに首を傾げていた。
しかし、この3人は休み時間もよく一緒にいるのだろうか。本当に仲良しだな、というか1人教えてもらえない真田くんなんだか可哀想だな、と3人のやり取りを聞いて思った。