「みょうじさんは字が綺麗だな」
3時間目が終わったところでいきなり隣の柳くんに声をかけられた。
「え?」
「いや、急にすまない。いつもちらっと見える字が綺麗だと思っていてな」
「え、いや、そんなことないよ。私の字なんて普通だと思うし、私より綺麗な字の人なんてたくさんいるし」
「いや、そう謙遜しなくてもいいと思うぞ。固すぎず、丸過ぎず、綺麗で読みやすい字だと思う」
次の授業の準備をしながら、軽く口角をあげて微笑む柳くんに、ありがとうと小さく返す。なんだろう、こんなふうに褒められることなんてないから少し胸がこそばゆい。そうなのかな、私の字って読みやすいのかな?そう思ってくれる人がいるのって嬉しいな。褒められて少し浮ついたまま私も次の授業の支度を始める。
「次って古文だったよね?」
「ああ、そうだ」
「訳文やってきた?」
「ああ」
「少しわからないところがあって、少し聞いてもいいかな?」
「ああ、かまわない。どこの部分だ」
私の机をのぞき込むように体を少し傾けた柳くんに「ここなんだけど・・・」とノートの空白の部分を見せる。「ああ、そこはだな...」と話し始めた柳くんの説明を聞く。ああ、なるほどそういうことか。柳くんの説明を少しメモをし、前後の文を踏まえて訳文を記入する。さすが柳くん。頭がいいと聞いていたけど、教えるのもわかりやすい。柳くんの賢さに改めて感心する。柳くんって頭もいいし、テニスもできるし、生徒会も入っていて、何でもできるのだなぁ、すごいな。そう、考えていて思い出す。
あれ・・・そういえば、柳くんって...
思いだしたことに改めて思考が止まる。チラッと一瞬柳くんに視線を向けるが、すぐに自分の机に戻した。
そういえば、柳くんの方が物凄く字が綺麗だったよね
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