「みょうじさんはどのような男性が好みなんだ?」
「は?」

昼休み、友だちと昼食を食べ終え、一度自身の机の所に戻ってくると、柳くんは先に自席に戻って本を読んでいた。柳くんの姿を横目に、お弁当を鞄の中に仕舞っていた時に、先ほどの唐突な質問である。いきなりの質問に、私の目は点である。

「いや、そこまで驚くとは思わなかった」

私の反応に、柳くんは一瞬珍しく開眼したが、すぐに閉眼しいつもの凛とした表情に戻った。

「本当唐突に話を振ってくるね」

「すまないな」

「いや、別にいいけど、柳くんもそういうことに興味あるんだね」

「まあ、そういうお年頃だからな」

「そういうお年頃って、柳くん!」

柳くんの返しに思わず笑う。柳くんって見た目中学生とは思えないくらい大人びているし、落ち着いているから、恋愛とか興味ないのかと思えば、そうか、そうだね、柳くんも私と同じ中学生だった。見た目だけで勝手に判断してしまったのは悪いけど、柳くん自身にお年頃って言われると笑いしか出てこなかった。

「で、どうなんだ?」

「どうなんだって言われても」

正直、好みと言われても、優しいや格好いい等は出てくるが、これといった特徴的な好みが考えてみればないような気もする。今まで好きな人がいたことはいたが、どこがと言われても特徴ないし、好きな芸能人のどこが好きかと言われても、格好よくて私のタイプとしか説明ができないような気がする。んー。普通に優しいとかしか出てこないなぁ、となかなか返答ができず、考える。

「いや、そこまで難しく考えなくていいぞ。思ったままに話してもらえればそれでよかったのだが」

「そうなんだけど、まあ、うん、優しくて、格好よくて」

「ああ、そうか、なるほど」

答えにくいのだな、と私の反応を察してくれたようで、苦笑いをこぼしながら頷く。

「そうそう、何ていえばいいのかな。凄くぼやっとした感じでありきたりなんだよね」

「なるほど、だが、皆そんなものではないのか?」

「そうかな?」

確かに、皆そんなものなのかもしれない。友達とかも、好きな人のこと聞いても格好いいとかイケメンとか、優しいとか、可愛いって話すぐらいだから、そんなものなのかもしれない。柳くんの言葉に少し納得しつつ、話を続ける。

「柳くんの好きなタイプってどんな人なの?」

「・・・俺か?」

逆に聞き返された柳くんは口元に手を当て、少し考えている。柳くんのことだから大人っぽい人とか合いそうだな、物静かで、THE大和撫子っていう感じの子が合いそう。勝手に色々な想像を膨らましながら返事を待つ。暫く考えた後、一言ずつ口を開いた。

「計算高いのもいいが、予想外なことをされるのもそれはそれで面白いと思う。それに、」

柳くんはそこまで言って、話を止めた。それに?何だろう?何かありそうだけど、聞いていいのかと思いつつ続きを待つ。少しの時間考えた後、一息ついて私の方に顔を向けた柳くんの言葉を待つ。

「それに、好みというのは好きになった相手により変化するものだからな」

少し笑みを浮かべて話す柳くんに、何それ結局わからないじゃんと返すと、そうだなと笑い返された。結局柳くんの好みはわからないし、私の好みもわからないという。結局、お互いに何もわからないで終わった。