やろうと思えばやれる




『やればできるじゃないですか』

私のその言葉にクッと彼は苦い顔をしたのを見て私は笑ってしまった。

「笑うんじゃねえ!お前がいうから俺は仕方なく、」

『はいはい。ありがとうございます』

「全然思ってねえだろ・・っ」

棒読みで返すと、再び悔しそうに顔をいがませた。



事の発端は私の昨日の発言である。

毎週毎週跡部がしつこいため私はある条件を跡部に提示した。

【普通の格好をして、普通の所に行くなら考えます】と。



「おい、明日一緒に出掛けるぞ」

『嫌です』

これは毎週金曜日に跡部と私が交わす会話である。
何故かいつの間にやら跡部は私に興味が湧いたらしく、ここ数か月ずっと跡部が私を誘ってくるようになった。どうせお騒がせキングの気まぐれだと思ってかわしていたのだが、あまりにもしつこいためあの跡部に条件付きなら考えると返したのだ。部活があるから昼からであるし、まあ、どうせそういっても跡部のことだからゴージャスな格好をしてくるのだろうと思って、来た瞬間帰ろうという魂胆だった。
しかし、いざ当日来てみるとあの跡部様がチェックのシャツにトラウザーズを履いているではありませんか。あれ、跡部様?どうしたんですか?と茶化してしまいそうだったけど、頑張ってくれたんだなということに気が付いて茶化すことはやめた。まぁ、言葉違うけど茶化してしまったんだけれども。しかし、普通の服でも着こなしてしまうのはさすが跡部様ですね。

『で、どこに行きます?』

「そうだな、えっと、」

そう言って、額に指を当てた跡部。え、意外跡部がデートでそんな風にするなんて。跡部のことだからスマートにサッと案内するのかと思っていた。

「最近できた水族館でも行くか」

『へえ・・・』

「・・嫌か」

『え、いや、いいよ』

そうか、行くぞと機嫌よく歩き始めた跡部の後をついていく。いや、今の反応はなんか水族館を選ぶとか意外だなと思ったんだよ。


水族館に付くとやっぱり人が多かった。けど、それでもチケットを買って進んでいく跡部。貸し切りとかじゃなくてよかったとか余計な心配をしてしまっていたがそうではなく一安心し、跡部からチケットを受け取りついていく。

その後も普通に水族館の中を回って、ショーを見て、水族館を出た。出る前に、跡部がお揃いのキーホルダーを買ってきたためありがとうと言ったら、ちょっと嬉しそうにしていた。ちょっとキュンときた。

その後もそこら辺のカフェに入って話して、電車に乗って・・・なんか普通のデートだなぁと思った。


『今日はありがとうごさいました。跡部も普通のことできるんだね』

「どういう意味だ」

家まで歩いて送ってくれた跡部。なんか今日の跡部はいつもと違って、少し私のリズムが狂う。

「今日は楽しかったか」

『うん・・・まぁ』

「何だその反応は」

『いや、楽しかったけど』

いつもの跡部じゃないから何だか狂うとか言いにくいし、それに・・・


「ならいいんだが。・・・また、一緒に行ってくれるか」

『・・・嫌』

「は?なんで」

『・・今度行くなら、条件があるの』

「あーん?何だ」


『いつもの跡部と行きたい』


「・・・楽しませてやるよ」

一瞬目を見開いた後、いつもの自信に満ちた笑顔で返してくれた彼に私もとびっきりの笑顔を返した。








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