06 『うわ、痛そ』 「・・・」 いつも通り校舎の裏に行くと、千石がしゃがんでいた。 『女の子の力ってすごいね』 「うん、あんなにか弱そうに見えてどこからこんな力を出してくるんだろうね」 千石の頬にはくっきりと小さな手形の形が残っていて、痛そうだ。 スカートを押さえながら千石の隣にしゃがみ込む。 『そりゃ嫌でしょ』 「んー」 何故叩かれたのか話を聞いてみると、理由ははっきりしていて、千石が女の子にチャラチャラしているのがその女の子は嫌だったらしい。「どうして他の女の子と一緒にいるの?」って。まぁ、確かに普通は嫌だよね。好きではなかったら違うだろうけれども、千石のことが好きな子からすると、他の女の子と遊んだりしているのを見ると気分が悪いに違いない。 「けどさ、俺がそんな感じなのは今に始まったことじゃないわけじゃない?それなのにそんな気持ちを一方的に押しつけるようなこと言われても困るよ」 少し口を尖らせ、拗ねぎみに話す千石を横目で見ながら、少し苦笑いを零す。 確かに、千石は前からそうだ。私と話す前から色んな女の子と一緒にいて、一人の子に執着している姿を見たことがない。だからといって、それでもいいというわけではないけれども、千石の言い分もわからなくもない。 「俺が一人の子に絞ったら絞ったで、皆怒るでしょ?」 『あはは、すっごい自信』 千石の言葉に笑っていると、はぁと大きく息を吐かれた。 「どうしたら皆納得してくれるんだろうね」 『そうね・・』 んー、と少し唸りながら考えてみる。 千石の言う通りどっちにしても気にくわない子は気にくわないのだろう。 千石が一人の子とばかりいたらいたで、構ってくれない彼を気にいらない子がいるだろうし、色んな子と一緒にいたらいたで、他の子と一緒にいる彼を気にくわないと思うのだろう。 『千石の好きにすればいいんじゃない?』 「あ、放り投げたな」 『だって、どうしようもないことじゃない』 考えたところで解決方法はないと思った。どっちにしても彼女たちの反感を買うのであれば、千石が好きにしていることが一番いいよ。 「それじゃあ、また俺が叩かれるじゃん」 『もう慣れたことじゃないの?』 「ひどいなぁ」 赤くなった頬を軽く擦りながら苦笑いする千石を見ながら、クスリと笑う。 『まぁ、』 そんな千石を受け入れてくれる子がいつか現れるよ はい、と目を大きくして驚いている彼の目の前に、持ってきた冷やすためのアイスを千石の前に差し出した。 視線をずらしながら、アイスを受け取った彼の口元は少し笑っていて、その表情に私も同じように表情を崩した。 『ま、たぶんだけどね』 「たぶんって、・・・まあ、いっか」 . |