02

黙々と弁当を食べる田内さんを見つめながら過ごす昼休み。
ああ、なんちゅう幸せな時間なんやろか。幸せすぎて、今の気持ちをここから叫びたいくらいや。せやけど、そんなことしたら、少しでも彼女を見る時間が減ってしまうからせんけどな。

今日、授業中ずっと彼女を見とった。黒板を見ている姿とか、頑張ってノートを映している姿とか、たまに頭を抱えている姿とか、ああ、ほんま可愛い。たまらん、抱きしめたい、と悶えとった。今、彼女の頭の中は俺で一杯なんやろか、俺のこと考えてくれとるんやろか、考えといて欲しいな、と何度も願った。

好きにさせたる、とかいうたけど、それは冗談ではない。ほんまにそうさせたろう、と思ってる。せやけど、自信があるかと言われたら、本当のところそうではなくて、少し自信のない弱気な俺がおる。好きになってもらえれへんかったらどうしようとか、他に好きなやつおったらどうしようとか、めっちゃ不安に思う。俺だけが好きやとしたらつらい、な。

昼休み彼女の手を引いて教室に戻る。
互いにあっつい手を合わせ歩く廊下はいつも以上に距離がある。今、何考えてんのやろ、俺のことかな?俺を意識してるからこんなに手熱いやんな?ほんまちっこい手。俺の手と違って柔らかいし、小さいし、細いし、本気で握れば折れてしまいそうや。そんな手を力を入れ過ぎへんように、優しく引っ張る。繋いどる手から彼女の気持ちが伝わればええのに、俺の気持ちを伝えられたらええのに。ほんまもどかしいわ。

「じゃ、あ」

教室について、自分の席に戻っていく彼女の背中を見つめる。
真っ赤にしている顔は向こうを向いていて見えへん。ずっと近くで見つめられたらええのに、悔しいな。
チャイムが鳴ると君は俺以外のことも考えるんやろ?先生の声とか、教科書の内容とか、間違えたから消しゴムで消そうとか、俺のことを必死で考えんようにして、途中で思いだして照れて。他のこと、時々俺になるんやろ?昼休みはずっと俺のこと考えといてくれてたのに。

君は気づいてへんのやろな、俺の頭の中が君で一杯なことを、ずっと君のことを考えていることも。

早く田内さんが俺と同じくらい俺のことで一杯になったらええのに。



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