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放課後に爽やかに鳴り響く音。初めて見たその風景は私が思っていた以上にとても熱く感じた。
初めてと言っても、見たことがないというわけではない。なんというかあれだ、チラッとは見たことはあっても、まじまじと意識して見たことがなかったのだ。


「一回見に来てや」

昼休み、御飯を食べながら話していると、突然何を思ったのか白石くんが切りだしたのだ。

『見に来てって、部活?』

「せや」

見てるんもおもろいもんやで、と得意げに話す白石君だが、正直な話困った。別にテニスが嫌いとかそういう事ではなくて、今白石君と私は付き合っていることになっているとはいえ、わざわざ部活を見に行くまで私は今の状況を受け入れられていなかったりする。そりゃ、彼氏彼女だったら、彼氏の部活姿を見たい!と思うのは当然かもしれないが、どちらかというと私はわざわざ見に行くといったあからさまな行動は避けたい。それに、白石君のことは前に比べると好きではあるけれども、その恋愛として好きなのかどうかまだよくわかっていない。だって、好きだって言われてから徐々に話してこういう感じになっているわけであって、これが本当は友だちとしてなのか、恋愛としてなのかなんて私にはよくわからない。ちらりと覗くぐらいならまだいいけれども、生憎テニスコートはそんなちらりと見れるようなところにはなくて、覗きこまなければ見えないところにあるからさらに困るのである。

「・・あかん、かな?」

眉を下げ、不安そうに問う彼に苦笑いを零す。
どうしよう、別に白石君の事が嫌いなわけではないし、テニスだって嫌いではない。上手な断り方があるなら、ぜひ教えて欲しい。そういう心境である。

そんな訳でいつも通り白石君のペースに巻き込まれ、先にコートに行ってしまった白石君を見るためにテニスコートに向かった。一緒に行くのかと思ったら、田内さんの来れる時でええよ、色々と用事もあるやろし、と別々に行くことになったのだ。私に気を使ってくれてるのかもしれないが、むしろさらに行きにくい状況である。このまま行かないという選択肢はないのかと思ったが、行くと言ってしまっていたため、さすがにそれは人間として不味い。放課後友だちと話した後、テニスコート近くをうろうろとしてたら、ちょうどやってきたオサムちゃんに見つかりコートまで引っ張られたのだ。

「白石ー、彼女やでー」

皆の目の前でオサムちゃんに叫ばれ、顔を紅潮させる。ちょ、何いうてくれてんねん!と、オサムちゃんの肩を思いっきり叩いた。ま、そう照れらんと、な?とニヤニヤと見てきたオサムちゃん。何やねんその顔は!ムスッとした顔で返していたら、

「田内さん」

聞きなれた声で名前を呼ばれ、ハッとそっちに目を向けると、大きく手を振っている白石君と目が合った。うわぁ、なんか恥ずい。口を押さえながら小さく振り返すと、白石君は手を止め嬉しそうにはにかんだ。・・・そんな嬉しそうにせんといてや、なんか私まで照れるやんか。

練習が再開し、私は近くのベンチに座らせてもらう事になった。
目の前でボールが飛び交い、皆が練習しているところをじっと見つめる。初めて間近で見るテニスは思っていたよりも迫力があって少し怖いと感じた。だけど、それ以上に皆が真剣に取り組んでいて、それどころではなかった。白石君はと言うと、部長だから練習の流れを仕切ったり、後輩に教えたり、白石君自身も練習したりしていた。


「白石、カッコええやろ」

オサムちゃんが近くにやってきてそう言った。

『・・うん』

「ああ見えて、人一倍頑張ってるからなぁ。人の期待に応えるっちゅうのは人が考えてるよりも大変なことなんやで」

サーブが決まり、絶頂とよくわからないことを言っている彼を見ながら、オサムちゃんの言葉を聞く。白石君は何でもこなしてしまうイメージがあるけど・・・そうやないんかな?と彼を見つめながら考えていると、白石くんが私に視線を向けた。


「見とった?」

と口パクで言ってきた彼にゆっくりと頷くと、彼は照れるように口をはにかませた。



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