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「田内さんおまたせ」

帰り道白石くんと手を繋ぎながらゆっくりと歩く。左手に感じる温度は今までに比べて暖かく、より逞しく感じた。

あの後、教室に戻った私たちは冷やかされることとなった。事情を知らないクラスメイトは一緒に帰ってきた私たちを見て、仲直りをしたと思ったらしい。まぁ、あながち間違ってはいない。冷やかして来るクラスメイトに戸惑いながら、隣にいる白石くんを見てみると、迷惑そうな口調だけど、表情はとても嬉しそうで、思わず私も笑顔になった。

放課後、今日のこともあり、一緒に帰ろうと言う白石くんの部活が終わるのを教室から外を眺めながら待つ。外では野球部やサッカー部、陸上部の子たちが声を張り上げている。テニス部は校舎から離れているためあまり見えないが、ボールとラケットがぶつかる音が聞こえる。頑張っているんだろうな、と目をつむると前に見学に行った練習風景が甦ってきた。また、見に行ってもいいかなぁ。きっと彼なら頼んだら喜んで連れていってくれるだろう。頼んだ時の反応を想像すると、自然と笑ってしまった。

部活が終わり、白石くんから連絡が来る。鞄を持って、部室へ向かうともう着替え終わって、部活仲間と話している白石くんを見つけた。私に気がついた彼に手を振ると、仲間に背中を叩かれ冷やかされながら、私の方に小走りでやって来た。帰ろうか、と自然と繋がれた手に違和感を感じることなく、私たちは帰路につく。部活であったことや友だちと話した世間話など、他愛のない話をする。久しぶりにゆっくりと話すなぁと思って、白石くんを見ていると、白石くんの表情が一瞬陰り、手に力が入った。どうしたのだろうと白石くんを見ると、彼は私が気がついたことがわかったのか、少し遠慮しがちに笑顔を作った。


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テーマ「人外ファンタジー」
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