01

それは突然のことで、きっと私は男の子のことを理解できていなかったんだと後になって気づいた。どうしたら私はよかったのだろうか、今となってもわからない。ただ頭の中に残っているのは私が知らない男の人の顔をした彼だ。

私と白石君が付き合っているということを学校のほとんどの人に知られている。初めは半信半疑だった人たちも本当に付き合っているんだと思い始め、毎日のように聞かれた質問も落ち着き始めたのだが、最近はそれとは違った雰囲気を感じ始めた。彼と一緒に歩いていると視線が痛い。まぁ、茶化してくる男子もいけど、それとは違った女の子の視線が最近強く感じる。白石君は女の子にとても人気で、告白して振られたという話は毎月のように聞いていた。最近は前のようなきつい話は聞かないけど、やっぱり彼が好きだという話はよく耳に入ってきていた。そういう視線を感じるたびに罪悪感を感じてしまう。彼と付き合っているとはいっても、私自身が彼を好きだったわけではなくて、流されて付き合っているようなものだ。彼女たちほどの感情は今はない。白石君はいいって言ってたけど、そんな気持ちで付き合っていいものだろうかと感じてしまう。

「田内さん、どないしたん?」

といっても、今はそんなことを考えている状況ではない。
何故か白石君の顔が目の前にあって、白石君と壁にサンドイッチされている状況だ。どうしてこういう状況になっているのか私自身呑み込めていない。だけど、白石君の中で何かが起こったのは確かである。

「こっち見てや」

覗き込んでくる白石君の顔が近すぎて顔をそらしていると、さらに白石君が近づいてきた。視線の端に白石君が見える。近いからか、気持ち白石君の息がいつもより荒く感じる。少しいつもより声が低いようにも思う。

「怖い?」

なんだかいつもと違う白石君がポツリと呟いた。
怖い、・・・確かに怖い。いつもと違う白石君が何を考えているのか、何をしたいのかわからなくて怖い。けど、白石君の雰囲気から怒っているわけではないと思う。体がビクッと一瞬飛び跳ねる。背中に腕が回ってきて、白石君に包まれた。怖くない、大丈夫やと私をあやす様な声が耳元で繰り返される。彼自身がそういうのだから怒っているわけではないのはわかった。けど、やっぱり状況がわからないし、どうしてこうなったのか、白石君自身が何を思っているのかまったくわからないから怖い。彼が何を考えているのか知りたい、ちゃんと話を聞きたい、だけど、聞いてもいいのだろうか。そう考えてしまうほど、今の白石君と私の距離は離れている。私は白石君がどういう人なのかほとんど知らないのだ。

「田内さん」

耳たぶ直接触れるように名前を囁かれる。

「好きやで」

熱っぽい息が耳にかかる。

『ッ!』

体が大きく揺れる。

「かわええな」

私の反応か、何なのかわからないが、白石君が耳元でまた呟いた。ちなみに私がビクッとしたのは、白石君が私の耳に、その、キスを、したからだ。さっきのことを思い出すだけでも頭が沸騰しそうだ。あー、だめだ、本当に白石君どうしたんだ。本当に何が起こっている。

「あー、あかん」

1人でアワアワと何も発することをできず、固まっていると、私を抱きしめながら白石君が耳元であかんとか言い始めた。いやいや、今更あかんとか、全体的にあかんでしょとか思っていたら、更にぎゅうっと抱きしめられた。それと同時に何かが当たり、

田内さんの中に入りたい

と呟かれた瞬間、思わず彼を突き飛ばして走り出してしまっていたのだ。


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