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部活見学が終わり、白石君にちょっと待っといてと言われ、部室の外で待っていたら、学ラン姿の白石くんがバタンと音を立てて出てきた。
「ほな、帰ろか」
目を細めていった彼に小さく頷くと、私たちは部室を背に歩き始めた。
「部活どうやった?」
校門を少し出た時、斜め上から声が掛かる。
「初めて見たけど、面白いね、テニスって」
「・・・初めてやったんや」
「いや、その初めてって言うか、ちゃんと見たのがだけど」
少し肩を落とした彼に慌てて訂正する。
「ええねん、まあ、今回見てもらえたっていうのは一歩前進したっちゅーことやな」
「・・・え?どういうこと」
「あ、気にせんといて。こっちの話やから」
言っている意味がわからず首を傾げる。一歩前進?
「俺のテニスはどうやった?」
「どうって、」
はっきり言うと皆上手だったから上手としか言えないけど、こういうときって何か気の利いた事を言うべきなんだろうか?けど、別に白石君に好かれたいわけでないからそんな風に考えなくても・・・。ん?ちょっと待って、白石君と私の今の関係って。
「俺、カッコよかった?」
「え、あ、うん」
「ホンマに?」
「うん、かっこよかった」
そっか・・・と、前を向いて口元を緩ませた彼をじっと見つめる。
白石君と私の関係っていったい何なんだろう、とふと思った。一応、周りからすると恋人なんだろうけれど、実際私の中ではそういう関係にはまだなっていなくて、だけど、実際はそうであって・・・
「・・嬉しいもんやな」
「え?」
ぼーっと歩きながらそんな事を考えていたら、彼の言った言葉を聞いていなくて、聞き返したのだが、
「田内さん」
「っ、ちょ、え、」
「あはは、そない焦らんでもええやんか」
急に名前を呼ばれたかと思ったら、左手に違う感触を感じた。
手を引きながら笑う白石君はきっと何ともなく手を握ったのかもしれないけれど、男の子とこんな風に手を絡ませて歩くのは初めてで胸のあたりがむず痒い。
「かわええなぁ」
「かわっ、いいって、」
「ほんまかわいいな、」
俺の彼女は
指を絡めながら嬉しそうに言った言葉に目を大きくする。
胸が高鳴ったのは、恥ずかしさから来たものだろうか、それとも後ろめたさから来たものだろうか。
彼の目を見続けることができず、誤魔化すように私は顔を下に向けてしまった。
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