01
今日は晴天、遊び日和だ。
白石君と付き合う事になってしまって6日目。あれから初めて迎えた土曜日。今日は学校が休みだから白石君と会う事はない。ゆっくり家で休もう、というわけではなく、2週間前から決まっていた友だちと遊びに行く予定である。
『お待たせー!』
駅前に行くともう全員揃っていた。先に買い物に行って、カラオケに行ってといつも通りのコース。いつも味気のない流れ。だけど、それでも楽しいと感じるのは友だち同士であるからだろう。
カラオケで皆ではしゃいでいると、いきなりドアが開いた。
「うわ、あんたらもいたん」
入ってきたのは同じクラスの男子達で彼らも偶々この店に来たらしい。彼らと合流し、再開する。初めてのメンバーもいて緊張もするけど、いつもと少し違う感じがして楽しくも感じる。女同士だと聞かない歌だったり、ノリだったり、変に刺激を受けるのだ。
皆でカラオケを初めて2時間。歌を順番に歌うものの、会話の方も弾んできた。
「で、どういう経緯で白石と付き合う事になってん?」
『え』
「せやで、ほんまいきなりでびっくりしたわ」
いきなり話を振られ、目を大きくする。どういう経緯って言われても、告白されてその流れで・・・としか言いようがない。
「ほんなら何、自分好きとちゃうん?」
「てか、白石からとかびっくりやわ」
わーわーと騒ぎ始めた男子達に少しムッとする。
確かに白石君はカッコいいし、私と釣り合わないのは分かってるけど、本人の目の前で言うのは失礼とちゃうん?とまあ、そう思ったが、面と向かってそんなことを言える度胸はない。
バタンとドアが勢いよく開いた。
「っ、は、え?」
「何?」
シーンと静まり返った室内。皆の視線は同じ方向に向いていた。
「・・・何してるん」
眉毛を顰めながら言った言葉と同時に部屋に女の子たちの高い声が響いた。
「きゃー!白石君やー!」
「なんで、なんで?」
「なつ呼んだん?」
『え、いや、呼んでへんけど、』
何故彼が来たのかわからず、パチパチと瞬きをしていると、少し離れた所から声が聞こえた。
「うわ、ホンマに来よったで」
「まさかホンマにくるとは・・・」
おそらく何かの現行犯そうな男子。メールか電話か何かできっとこそっと白石君に連絡を取ったのであろう。何してくれてんねん、と思って彼らを睨みつけるも、彼らの視線は白石君に向いていて私に気が付いていなかった。
「・・帰えんで」
『え・・?』
いつの間にか私の目の前に来ていた白石君は、私の手首を掴んだ。意味がわからず、さっと近くに置いていた鞄を掴み後を追いかける。彼の表情は怒っているような、何とも思っていないような、無表情に近かった。そんな彼になんといえばいいのかわからず、ただ引っ張られるがままについて行く。
店を出て、ずんずんと進んでいく。駅とは反対方向で一体どこに向かっているのだろうか。そんなことを考えていると、前を歩いていた白石くんがいきなり立ち止まった。
背を向けている彼が何を考えているのかわからない私は彼が何かを言うのを待った。
「・・・別にな、」
ぽつりと小さな声で言った声に耳を傾ける。
「・・別に、遊ぶなとは言わへんけど・・、その、男子と遊ぶのは、」
『・・・』
「別に疑ってるわけじゃ、ないんやけど・・、やっぱ、その、俺の彼女やし、」
背を向けたままポツリポツリと話す白石君。
もしかして、と思い、顔を覗き込むと、
「・・っ、な、なんやねん」
ほんのりと耳と頬を赤く染めていて、ちょっと悔しそうに睨まれた。けど、全然怖くなかった。
目を細めて笑うと、より一層睨まれたけど、そんなことは全然構わない。
白石くんでもヤキモチを妬くんだなと、彼の可愛い一面を知れたのだった。
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