最近の甘味好きも大概にしろ
「おはようレッド朝だよ!」
さて、今日もいつもと変わらずな一日が始まる。
現在午前10時。いつもよりかは少し遅い起床となる。暗がりの寝室へと続く扉を開けては転がり込むようにお目当ての人物へと直進だ。
今日はお寝坊さんなレッドに代わり朝食を作る日………というか単純に朝食を作る当番だ。断じてレッドが寝坊をしている訳ではない。
ちなみにいつもみんなに台所に立つなと言われるけど、実際はそんなに酷くはない筈だ。包丁も普通に握れるしフライパンだって返せるし、鍋だってかき混ぜる事だってできる。それが何故、いつの間にか周りの人達が目に針を打つかのような形相で、必死になって自分が台所に立つのを阻止しようとするのだ。え?何でかって?そんなのボクが聞きたいくらいだよ。何故だ!
それに今回は本当に、極々普通の朝食だ。フレンチトーストと目玉焼きを焼くだけ。そしてお得意の紅茶を、今日はアイスティーに仕立ててグラスに注ぐ。只それだけの超シンプルな朝ごはんだ。(ちょっと味が甘すぎちゃったかなぁと思ったけど、まぁ大丈夫だよね。うん、問題ない)
「レッドーおはよう朝だよー」
そんな朝食の準備をして寝室へと戻る。その向かう足取りは軽やかで、トントンと進む自分の足。お腹も空いてきた。
扉を開け一番に目に映るのは自分の寝床からはみ出たゾロアに、その隅に丸まって眠るモノズが。ピカチュウはしっかりとシーツにくるまって寝ている。
そんな三匹を見渡しながら目当てのベッドへと近付いた。今日は珍しくよく眠るなぁと思いながらシーツに埋もれるレッドを揺らす。
「レッド、朝だよー」
黒い髪がシーツに遠慮なしに散らばっているところを見ると、相当深く熟睡しているみたいだ。体を揺すって起こしても、いつも通りに起きてくれない事に吃驚だ。いつもは呼べばすぐに起きるのだが。
その透き通った赤い瞳は未だに伏せられていて、簡単には起きなさそうだ。
それが珍しくてついガン見してしまうが、今は彼を起こす事がとりあえず優先順位なのだ。いけないいけない。寝顔見放題な羨ましいくらいに整ってる顔に見とれてる場合ではない。
ハッと我に帰り再びレッドを起こそうと試みるが、こんなに気持ち良さそうに寝ていると何だか起こすのも気が引ける。
「…………えっと、」
どうしようかと考える。
とりあえず自分は今、猛烈に腹が減っているのだ。空腹1000%だ。本当はレッドと一緒に朝食を満喫したいのだが当分は起きそうにない…と思う。
少しだけなら先に食べても大丈夫だろう。うん、問題ない。
「レッドー…先に食べてるからね」
なんて本人は聞こえていないはずなのに声かけは忘れない。日常生活の賜物だ。
カチャンとドアを閉め、寝室から出て向かう先は勿論リビング。既にもう自分の分はお皿に盛り付けて用意してある。だがしかしまあ自分で言うのもなんだが中々の出来である。こんなに美味そうに見える朝食なんて稀だろというくらいの見栄え…あ、いや、ごめんそれは誉めすぎた調子に乗ってゴメンナサイ。
ぐぅ、とお腹が鳴いている。やはり自分のお腹は我慢が苦手らしい。椅子に座って紅茶を手元に置いてそして、
そして、
ブッチュウウウウウッッ
「ハッハッー!」
鼻歌を歌いながら生クリームをぶっかける。
お皿の上にはモコモコモフモフの真っ白な生クリームがドーン。ぶっちゃけ生クリームしか乗っていないように見えるが、まあ大丈夫だろう。そしてその量はお皿からはみ出るくらいまあまあ多い方だろうが…まあ大丈夫だろう。(トーストが生クリームで埋もれて見えないのが己の美点に背く)
もう朝はこれが一番だ。こう、胃の辺りがキツキツしてきて一日頑張ろうと思えるわけだ。言うなら朝カレーと同じ類いである。(ドクターユウヤさんに聞いたら唸っていた気がする)
生クリームだらけのトーストにスプーンをブスリと刺して口に運ぶ。クリームがボトボトと落ちるが気にしない。本当はクリーム一滴たりとも落とすことは許されないがまあ、うん。今回はまあまあいいでしょう。きっとそうなる運命だったんだと信じて。
「うへへへーいただきまーす!」
「楽しそうでなによりだ。…なあ少女」
「え」
生クリームの物体
(この前の健康診断で血糖値が異様に高かったから暫く菓子類は控えるようにと、俺は口酸っぱく言ったはずなんだが…。俺の言い忘れか…そうか。おかしいな、俺の言い忘れか。なあ少女)(え、ちょっ、やめ…一体何を)(パリーンッッ!!!)(コップがァァァ)