彼が本を読む理由




最近、本を読むことが多くなってきているような気がする。と自分で思う。

前までは本を読むことそれ以前に、ポケモンバトル以外の何かをすること事態が考えられなかった自分。いや、考えられなかったと言うよりも興味がなかったと言う方が正しいだろうか。

只、ポケモンだけに興味を向け、ポケモンバトルだけに明け暮れ、気付いたら人と関わることよりもポケモンと関わることの方が多くなっていたのだ。いや、それよりも人と関わること事態が面倒だった、と言うほうがしっくりくるが。


だけども今は、どうだろうか。



「……………」



隣にはうつ伏せになって眠る少女が。

顔を地面に擦り付ける勢いで伏せて死んだように眠っている。(顔面が潰れているのではないかと少し心配になった)
なんとなく気になって、その栗色の髪を引っ張ってみれば邪魔するなと言わんばかりに身動きを取った。少し残念だが、やはり起こすことには気が引ける。このまま寝かせてやろうと思う。


視線を本に戻す。

前までは、少女に出会うまで、ポケモン以外に興味すらなかった俺が。こうして今はこんな本を読んでいること事態が自分でも驚きだ。
昔は一人で不自由なく生活できていたが、そこに一人プラスすると何かと方程式が変わってくるのだ。それがグリーンやら他の連中なら構わずこのまま、昔と変わらない自分だっただろうがそのプラスは少女だ。
今までの自分では何かと駄目だと本能…いや自分なりに解釈したが。


少女が居るようになってから今まで不必要だった知識を吸収するようになった。

それこそ今までポケモン一通に向けられていた興味が二枝に別れるように知識を欲しているのだ。(いや、勿論のこと物理的に見ればポケモンと少女以外は興味すらないという結論だ)
少女と二人でいる時ならでは、必要な知識を集めていくのを今や率先して、本や雑誌を見てかき集めていく自分は昔の俺からしてみれば些か信じられないだろう。

どれもこれも少女の為だ。



「…もう昼か」



何気なく本から時計へと視線を上げればもうすぐ12時を回る。
そういえば昼飯がまだだったなと思い何を作ろうかとグルリと思考を巡らせ始め、また本へ視線を落とした。
人間が食す料理を作るのは破滅的な少女に代わり、食事は今や自分の仕事になっている事には何も反論も疑問もない。(寧ろそれを嬉々として受け入れる自分がいる気がする)



「……少女、起きろ」

「んー…待ってよお母さん今日は月曜日だよー…」

「…俺はお前を生んだ覚えはないんだが。いつまで寝る気だ。それに今日は日曜日で俺とお前は恋愛事情真っ只中だ起きろ少女」

「お母さん…お父さんとの恋愛事情はボクの見えないところで…」

「…………」



とりあえず昼飯よりも少女を起こそうと本を閉じた。



彼が本を読む理由
(ああ、今日も平和だ)





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