十二華




ドタドタドタッ

―――バンッ!



「うっお!!?な、何だジジイか…扉はもう少し優しく閉めろって母さん言って、」

「病院行ってくる」

「は?」

「ワカナが倒れた。病院連れてくから留守番頼んだぜ、ユイ」

「…………はあ!!?ちょっ、待っ!母さん倒れたって…!」

「いつもとちょい違ェらしくてなァ。アヤちゃんの面倒見てろよ?」

「待っ…!!」



夕方頃、アヤ一人だけ散歩から帰宅。

だがしかし散歩には母のワカナとアヤ二人で行った筈だが、何故母が居ないのだろうかと疑問に思ったユイ。アヤによればもう少し散歩続けるからアヤは先に帰れ、と言われたらしい。しかも付き添いの鈴虫を連れて。

確か付き添いはミツハニーだけだったような。帰り道危ないくないか、と思ったユイは早速ルクシオを連れて探しに行こうと玄関を出る。そう、玄関を出たその時。
突如上からサクヤが降ってきたのだ。それには流石のユイも呆然と父親の背中を見詰めたまま固まってしまった。…どうやら屋根から飛び降りたらしい。

ザン!と音を立てて着地したサクヤにユイは「え、は?」とパチパチと目を瞬かせる内にサクヤは羽織姿で森の中へと(物凄いスピードで)走って行った。

数秒間何がなんだか分からなかったユイは暫くしてやっと我に帰る。何やら尋常じゃない様子の父親の後を慌てて追おうとしたその時、また何かが目の前に降ってきた。青い物体。今度は何だと見ればそれは蒼棘…ルカリオで、ルカリオもまたサクヤを追うように走り出す。また呼び止めれば走り際、『ユイ君はアヤちゃんとお留守番でございます!』なんて捨て台詞のように置いて行ったのだ。


全くなんなんだ、と現在こうして待っていたのだが。何故か帰って来るなり大事になっているのは気のせいでは無いらしい。ドタドタと土足で家に上がって来ては扉を思い切り足蹴にしたサクヤ。しかも虚ろなワカナを腕に抱えて家に乗り込んで来るなりピジョットの入ったボールを掴んでまた出ていった。

何なんだ。



「……………母さん、お願いだから、しっかりしろよ」



こう何度も倒れられると、本当に心臓に悪い。

しっかり、しろよ。



「お願いだからしっかりしろよ」

そう呟いた意味は彼にしかわからない。

(今思えば、彼には母の行き末がうっすらと予想できていたのかも知れない)




十二華繚乱


しっかりしりゃんせ

背筋伸ばしてしゃんと前を見据えて

しゃんとおてんとうさんを真上に崇めりゃ

それで、





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