八華




「ねー今日って確か国語のテストだったわよねー?ちょっとどうしてくれんのよシロナさん勉強なんてしてないわよ」

「や、シロナさん君は勉強なんてしなくてもオール黒だろ」

「何言ってんのよ私国語が一番苦手なのよ。何よ日本語って何でこんなパターンがいくつもあるの意味分かんない誰よこんな面倒なもん考えたのは」

「シロナさん皺、眉間に皺」

「でも良いじゃないかシロナ。君は英語は万能だし」

「…まあ、私留学生だし。当たり前じゃない?」

「僕はぶっちゃけ理科しかやる気しないかなー特に石の課題がある奴。あれしかやる気しない」

「安心しろダイゴ、石の問題なんて殆ど出ないから」

「大丈夫君も安心しなよ、龍の問題なんて絶対出ないから期待しない方がいいよ」

「ちょっと二人とも喧嘩するなら余所でやりなさいよ鬱陶しい」



「……………てめぇら、俺の机に集って何やってんだ…」

「あ、おはようユイ!早速だけど今日国語と英語のテストあるよ机を英語で?」

「失せろ退けデスク」

「うんまあ当たり前だよね!って事でユイこの前見付けたこの石!ヤバいんだよ素敵なんだよこの反射具合見てヤバいんだよさあ石を英語でh「邪魔だっつってんだろストーン野郎ォオオ!!!」グブゥウウッ!!」



トレーナースクールにて。

8時30分、ユイがいつも通り遅刻ギリギリで登校して来た矢先。扉を開けたその先には何故か己の机にハイエナのように集る友人が1、2、3。
教室の扉を開けたまま立ち尽くすユイに例の三人組が気付いたようだ。いつも通り石を片手に近寄ってくる変人…否、無性に腹が立つ学友ダイゴに殺人キックをくれてやり、床に沈めたユイ。それでも尚石を語り尽くそうとする奴の頭に向かって鞄の角で容赦なく強打した。(この時ダイゴは48回目の敗北を味わったそうだ)

自分の席にどっかり座るユイにワタルとシロナは「おはよう」 と一言。それに適当に返し、ユイは鞄から教科書を引っ張り出しパラパラと流し見程度で流す。



「今日のテスト英語と国語と…トレーナー基礎学に模擬バトルだっけ?ユイ勉強した?もしかして今回もヤバイんじゃない?」

「まあまあ手は付けた」

「あら意外」



んま、とシロナは意外そうに口元を押さえる。まさか勉強してくるなんて…とシロナに続きワタルも「へえ」と若干驚いている様子だ。
そう、ユイは基本的にほぼ勉強しかり授業を真面目に受けない問題児に当てはまる子供なのだ。なので日頃のテストは赤点までとはいかなくても、悪い方に入る。自ずと成績は悪い方…な筈なのだけれど。



「とりあえず通知表に響くからな。真面目にやるしかねーだろ」

「って言っても今更遅くないかしら…?わかる?」

「バーカ、こんなんちょっと教科書かじれば誰でも出来んだろーが」

「ああ、なーる」



そう、彼は成績に入るテストだけ真面目にやるらしい。しかも普通にちょこっと勉強して点数が取れる人間だ。…たまにいるのだ、要領の良い人間が。

因みにこの学校は一般のトレーナースクールよりワンランクレベルが高い学校だ。頭の良さではなく“トレーナーとして腕が良い”子供だけが選抜で抜き出され、集められた集団がこのトレーナースクール。将来はジムトレーナーやジムリーダー、そしてリーグ四天王、リーグチャンピオンを目指す子供が多い。



「あ、そういえばユイ。今日模擬バトルだけど覚えてたかい?」

「ああ?そりゃお前、俺の得意科目だし…………………なあダイゴまた俺とペアだろ?」

「ええ!?また!?え、ちょっ…」

「石ころみたいに足蹴にしてやるよ」

「ちょっとそれもうバトルじゃなっ…!!」



そしていつもこの石好きがテスト相手だったと言う。



八華繚乱

友もそれは一生にあらず

一瞬の今だからこそ

同じ志を持った童と共に





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