act.92 七夕・朝






「レッド、レッド。今日ね、ライモンシティは七夕祭りがあるんだって!」

「七夕?………ああ、7月7日だからか」

「そうそう。せっかくだから行きたいな」



朝から昼にかけて大量の料理を2人と4匹であらかた消費したアヤ達は(残りは夕飯に回すことにした)今日は何して過ごそうかな、と考えていた矢先だった。アヤがポケフォンを何やら真剣そうに弄っており、オシャマリやチュリネは首を傾げて己のトレーナーを見ていた。何か気になることがあるのかなぁ、なんて二匹は揃って首を傾げるその様子は最高にプリティーだ。

それに気付いたアヤは思わずと言った感じで。だらしない顔で可愛いねぇ、と二匹の頭を撫で繰り回す。オシャマリもチュリネも満更でもない顔だ。えへへと笑っている様子は確かに可愛らしい。アヤも含めて。

レッドにとって目の保養である。(背後でピカチュウが負けじと『ねえ俺は?俺は可愛くないの?え?可愛いよね?だって俺ピカチュウだよ?国民のアイドル』なんて文句を垂れながらレッドに頭突きしているが軽く撫でられあしらわれていた)

熱心にポケフォンを見るアヤに何か行きたい所でもあるのかとレッドは
疑問に思った所で、アヤはその視線に気付いて画面をレッドに向けた。因みにレッドだけではなくピカチュウ達もその画面を覗き込む。

するとそこには本日七夕祭りの行事がライモンシティで行われると。

そう予定されている画像が映し出されていた。



「(七夕。そうか、アヤの誕生日の日なのか)」



奇しくも生まれた日が七夕など中々縁起が良いというかなんと言うか。

まあレッドも、人の事をとやかく言えない日に生まれているのだが。



「わかった。夕方から出かけるか」

「やったー!」

「お前、祭りごとが好きなのか」



アヤの好きな物。

それは聞いておきたい。大体は把握しているつもりだが他にも好みのものだとか、好きで続けていることとか、趣味とか。恐らく、まだ自分の知らないことはたくさんあるだろう。1つずつ把握して根こそぎ掌握しておきたい。



「え?好きか嫌いかで言ったら好きだけど……えっと。夜のイベントが好きで」

「そうなのか」

「うん。ほら、夜の方が何かとテンション上がるじゃん」



そういうものなのだろうか。

夜だろうが昼だろうが変わらない気も……。



「昼もね。勿論好きなんだけど」

「ああ」

「夜の風景とか、街並みとか。顔が違うんだよ」

「顔、」

「うん。顔ね。それにね?季節によって全く違うんだよ」

「…………そうなのか」

「そう!レッドはお祭りとかそんなに行かないの?あ、もしかして人混み好きくない…?」

「……いや、」



人混みは、あまり好きではないが。

そもそも自分は静かな場所が好きだ。

雑音が嫌いだったのだが。



「お前が一緒ならなんでもいい」



祭りごとも、あまり好きでは無い。

そもそも“祭り”は主催する側だった。祭りに参加して、それを楽しんだことは1回もない。というか楽しむものなのか祭りって。

けれどアヤと一緒に過ごせるものならそれが“好き”になるかもしれない。変わるかもしれない。

実際、嫌いだった自分の誕生日が少し良いものだと思えたのもアヤのお陰だったから。

きょとり、目をパチパチしたアヤは次第ににっこり笑って。



「じゃあ一緒に楽しもうね」



ああ、今日もアヤは可愛い。

マイナスイオン。

癒しだった。






七夕・朝

お祭りへ行くための準備をしましょう








- ナノ -