act.03 手持ち0
「はい!って事で、イッシュ地方に行くことになりました!」
「ブイ」
『へえ』
「だから皆も…」
「「「「…………」」」」
「……………え?」
皆が一歩後ろに後退しました。
「……え、いや、ちょ、皆さん?」
「…ブイ」
「「「「…………」」」」
「………」
『めんどうだから行かない、ってみんなが』
「……………えええッ!!?」
ここに揃う古株達。皆が皆して後ろ後ろにと一歩後退して行く。え、ちょ、待てよこれはいくらなんでも酷いんじゃない!?
まさか主人の旅同行にめんどうと片付ける君達かなり酷いんじゃない!?
頼みの綱であるウインディに視線を送るも素早く反らされた。え、酷い何これイジメ?
「ブイ、ブイブイ」
『どうやらまだダラダラする生活を送りたいらしい。サンダースも一人で行って来い言ってるぞ』
「なッ…」
『まあ良い刺激にはなるだろ?旦那も居るし問題無いんじゃないか』
「え、ちょっ、サンダースゥゥウウ!!君相棒でしょ!?酷くないこれぇぇえ!!あ、蒼!蒼は!?」
『皆が行かないなら俺も行かない』
「チクショオォオオオ!!お前らチクショオォオオオッ!!」
煩い、とサンダースに体当たりされた。え、これ主人の扱いなの?
え、何これ新手のイジメ?
* * * * * * * * * * *
「でね、皆にめんどうだから行かないって言われたんだ…」
「………」
「相当凹むよ。何なのあのコら酷いよいくらボクでも心パーンだよ…」
「(……好かれてるんだか好かれてないんだか分からないな)」
まさかめんどうだから行かない、と言われるとは思っていなかったボクは多大なショックを受けていた。酷い。酷過ぎるぜあいつら。まさかのサンダースにまで見離された。お前らそんなにニートが良いのかチクショウ…!
グズグズと鼻を啜りながらレッドに文句を垂れるボクは、宛ら18歳だとは思えないだろう。レッドはよしよしと慰める様に頭を撫でるが、最早ショックで開いた心の裂け目は簡単には埋まりそうにない。
「…取り敢えず、行かないなら仕方ないだろ。俺達が居ない間、あいつらを何処に預けるのか決めたらどうだ?」
「あ、うん。そうだね…って言っても簡単に頼める人なんて…………………、」
あ。一人、居た。
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(パソコンに向かうアヤの後ろ、レッドはピカチュウと向き合いアイコンタクトを取る)