act.41 一匹目、アシマリ
「最近のボールの種類って…あの、凄いいっぱいあるんだねぇ。ボク知らなかったよ。ボールなんて最近では買ってなかったし」
「日に日に改良されてるからな。さて…ボールも含めて適当に買ってこい。あとこれ、支払いはこのカードな」
「え?いや自分のものは自分で払うから…」
「いいから。お前は買い物終わったらこの階で待機だ。目を離した隙に死んでたなんて言ってたら敵わん」
「デパートで死ぬ事はさすがにないんじゃ!?…え、あれ?レッドどっか行くの?
」
「予約してた物を取りに行くだけだ。すくに済むだろうからイイ子で待ってろ」
これまたポン、と頭に手を置きレッドは颯爽と背を向けて上の階へと向かった。本当に後ろ姿誰なのアレ。
じゃあ、頼むな。とピカチュウにも耳打ちすると「ガッテン承知」と手を挙げてブンブン尻尾を振っている。
街中でしこたま泣いたアヤはレッドが持ってきたクレープをもしゃもしゃ平らげた後ライモンデパートに赴いていた。豪華なクレープを持つレッドはなんとまあシュールな画である。持ってるものと顔が合わなさ過ぎた。
デパート内のフレンドリーショップに入ると流石大都市なだけあって品数が圧倒的に多い。今や全国ではモンスターボールは35種類あるという。中にはボールを集めているコレクターもいるとかないとか。
「昔なんて3種類くらいしかなかったもんねぇ…あ、ほらアシマリ。好きなボール選んでよ」
「マリ?」
「こんなにボールあるんだもん。どうせなら好きな家に入りたいじゃん?…そう言えばボールの種類によって居心地とか違うものなのかな…」
「チャア」
いや、俺は1個のボールしか入ったことないから分からないけど。
ピカチュウはそう言われてみるとちょっと気になってしまった。ボールチェンジできないかな、とか本気でそう考えて。
アヤに抱っこされたアシマリは戸棚に陳列された色とりどりのボールをしばらく吟味して、あれが良い、と手で指し示した。どれどれ、とアシマリの手を辿ると水色の綺麗なボールで商品名にはダイブボールと記載されていた。
「(オシャレ……!!)」
尚且つ自分の体の色と合うようなハイセンスぶり…!!
アヤも一目見た瞬間ベスト3に入るくらいのオシャレボールの中の一つだった。はい心得た、とアヤは少し戦きながらダイブボールを1個と他の目に付いたオシャレボールを数個、モンスターボールを数個、その他戦いに重要そうな道具を買ってフレンドリーショップを後にした。
定員から「あざしたー!」と元気な声を背中で受けながら目に付いたベンチに座る。早速買った物をバッグへと詰め込み、残ったダイブボールをアシマリに向ければ待ってましたと言わんばかりに自分から入っていった。開閉スイッチが赤く点滅し、しばらくすると光が消える。そのボールにポケモンが登録された証だ。
「……本当に入った…」と小さく呟けば今度は自分から飛び出してきたアシマリに、「改めてだけど、アヤです。どうぞ宜しくね」と軽く挨拶するとアシマリは嬉しそうに頷いた。
「そういえばアシマリってメス…なの?」
「「(え、今更……)」」
「んん?どっち?オス…?」
「ムー」
「えっじゃあ女の子!?」
「マリ」
「……っ!!史上初初めての女の子だァァアッッーー!!!」
そう、アシマリは♀だ。アヤは人生で初めて♀ポケモンをゲットしたのである。
イヤッフーーー!とアヤの歓喜した声がそのフロアに響き渡るのであった。
一匹目、アシマリ
後に最強のハイパーボイスの使い手になる。