act.04 バッジ集め






「バッジ集め?」

「はい。可能な限り取得したくて…」

「え、何?私に挑戦する為?」

「めっ滅相もございません!」



本日のおやつもアヤのリクエストが通りホットケーキである。(アイスと生クリームが乗ってる)
それを頬張りながらバッジを集めようかなと思うんですけど、と言うとフライパンを持ったシロナさんは一瞬ポカリと口を開けた。

いや、シロナに立ち向かうなんて出来るわけが無い。何言ってんのさ。

シンオウの女王様だぞ?そんな相手にそんな恐れ多い事を。自分なんかがこの人に挑むなんて一万年早くて、何せまだ彼女のポケモン一体も倒せていないのだから。だってさ、聞いてよ。幸せを運ぶ筈のポケモンであるトゲキッスが何であんな凶悪そうな顔してるんだろう。彼女の十八番のガブリアスなんて阿修羅じゃないのか。武者である。

とりあえずチャンピオンのポケモン達は皆恐ろしい。シロナだけじゃない。ワタルも、勿論ダイゴもだ。



「ふうん?…ま、良いんじゃないかしら。自分の実力試しでジムを制覇しながらバッジを集めるトレーナーも、コレクションとしての価値も高いから集めているトレーナーも大勢いるしね!今のアヤちゃんの腕試しって事でバッジ集めも悪くはないね」

「って事は理由を話せば、いつもより仕事量減りますか…!?」

「それは無いと思うけど」

「やっぱないですよねぇ…」

「それに、そこらのトレーナーよかアヤちゃんの方がよっぽど力は有るし、純粋な力比べするなら……バッジも半分くらいまでなら楽に手に入ると思うわ。しかもなんたってこのシロナ様!私直々に鍛えてるんだから二週間以内にジムバッジを全て集め切るのは当然の事よね!」

「二週間!?」

「空飛んで行けば一日一個は軽いわよ。いいことアヤちゃん?仕事を休んでジムバッジ取りに行くなんて出来ないから、休みの時に行くしかないじゃない?グランドフェスティバルまで半年もないんだし、本当なら休みの日は演技の練習をした方が良いに決まってるもの。ジムバッジなんて取りに行っている暇はアヤちゃんにはないの。本当ならね。バッジに時間かけて本来することをおざなりにして舞台で大恥をかく………そしたらそれを見たレッドくんはどう思う?」

「だっ…」



大問題じゃないですか!

ガン!と現実的リアルな話しが脳に突き刺さった。第一今頑張っているのはヒカリとの約束もあるがその半分はレッドとの約束でもあるのだ。

「お互いにやるべき事をちゃんとする」

それが今回レッドと離れる前にした話である。

一生懸命やって、負けてしまうのは仕方ないかもしれないがただの世間体のようなものを気にしてそっちにかまけて負けるなんてあってはならない。

レッドに冷たい目で「そんなものか」程度の、小物だとは思われたくは無い。

そんな事あってたまるか。



「うっ…!」



どうやら集めるなら本当にマッハのスピードでバッジ集めをしなければならないようだ。グランドフェスティバルは半年先。調整などを入れたら到底、半年で準備出来る期間では無い。休みの日は出来ることなら演技練習やバトル指導をしてもらいたい。
けれど参加者のプロフィールを見ると強いコーディネーター程バッジ取得が多い者ばかりだった。その中でも確実に障害となるのがヒカリや上位層のコーディネーター達だ。

そんな中、アヤのバッジ取得数は雑魚である。いや、うんこである。(※本来コーディネーターのステータスにはジムバッジの有無なんて関係ない)

アヤのコーディネーターとしての戦績は申し分ないが、目指すは完璧だ。劣っている所があれば指を指されて笑いものにされる。
そう、アヤは暴力沙汰を起こしてから周りから煙たがられているからだ。ちょっとのミスや劣りは粗探しのようにしてなじられる。

ミクリに取り返しのつかないことをしておいて勝手が過ぎるが、そんなのは嫌だ!

しかもグランドフィスティバルは一ヶ月を切ればもっと仕事の量は増えると聞くし、本格的に時間が無い。こうしちゃいられない、ならば今すぐ実行に移さなければ。

バッ!と時計を見れば13時を指していた。



「ちょっ…い、行って来ます!」

「ご飯までには帰るのよー」

「はーい!」



ボールベルトをひっ掴みカイリューをボールから解放した。
寝起きなのかブルブルと顔を振るカイリューの背によっこいせと跨がり、バシバシと背を叩いた。



「ルゥ、ルゥー!」

「カイリュー!クロガネまで頼むよ!炭鉱ハンターヒョウタさんから順にバッジぶん取って…ヒイィィィ高い!!高ぁーーいッ!!」



一気に急上昇するカイリューに絶叫しながらクロガネシティまで飛んで貰う事にした。



「い…いざ尋常に勝負…」

「だ、大丈夫?顔色悪いよ?………って、もしかしてキミ、」

「よ、酔った…こんな、こんな事してる場合じゃないんです……ヒョウタさんバッジください…!」

「うん、良いんだけどまずバトルね。手順違うよアヤちゃんでしょキミ?トップコーディネーターだよね?なんでこんなとこにいるの?聞いてる?」





バッジ集め

いつぞやの悪評で有名なコーディネーターの子が挑戦者として心底吃驚したヒョウタであった。




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