act.15 ジム破壊リーダー爆発





「ル、ルカリオ!」

「よっし!」



あれから昼ご飯を綺麗に平らげたアヤ達はすぐにジムに訪れた。ジムトレーナー達をスパッと倒し、いざリーダーを目の前にすると何て偶然か。

どこかで見たことある大食い少女が居た。

トバリには時々シロナに連れられて何度か来ることがあって。その時に「ここが一番美味しいからトバリに来た時はこのお店にいつも入るのよ」と。オススメのお店を教えて貰ったアヤは後日そんなに美味しいのかとちょっとワクワクしながら、そのカフェのような外観のレストランの入口をくぐった。確かにメニューにあるご飯は全部美味しそうだ。……いや、というかめっちゃ美味しかった。
可能であれば全てのメニューを食べてみたい。中でもアヤはサーモンのクリームスープパスタが一番美味しいと思っているのだが。

その時に高確率でトレーナーが集まるレストランのカウンター席を陣取り、一人の女の子が食事をするところを何度も見た事がある。それだけなら何とも思わない。只の常連さんかと解釈はできる。できる…が。

食べる量が尋常じゃなかった。

彼女の左右には既に完食された丼や皿が積み木のように積み上げられていた。それでも尚食堂から出てくる料理を難なく平らげるとまた次の料理へ…見たところ全体的にかなり細いのに、どこにあんな量が入るのか。見てるこっちがお腹いっぱいになる程の食べっぷりに目を反らしたものだ。いくら自分でもあんな沢山は食べられない。

すっごいなぁ…あんな細いのにめっちゃ食べるなぁ…フードファイターか何かかな?

そんないつかの思い出の中の人がジムリーダーとして目の前に居た時は本当にびっくりした。スモモと名乗った見た目同年代の女の子。そうか、ジムリーダーだったのかこの子は。

スモモは目を回しているルカリオをボールに戻した。



「あー…負けちゃいました…。お見事です!どうぞ、コボルバッジです。受け取ってください!」

「ありがとうございます!……よっし 、」



輝くバッジを頂戴してバッジケースの中に突っ込んだ。

ピンク色の髪の毛に、鼻に絆創膏を貼った明らかに体育会系な少女。ノースリーブにジャージと動きやすそうな格好をした彼女は手持ちの格闘ポケモンと同じ格闘家なのだろうか。



「あ、あの…」

「はい!何ですか?」

「違ってたらすみません。スモモさんっていつもこの近くにあるレストランでご飯食べてたりとか、」

「え?……あぁ!あそこのレストラン美味しいですよね!この街のトレーナーはどれだけ食べても半額ですからねぇ、天国ですよ!たまに大食いコンテストもやるんです」



どうやら食い気が物凄いらしい。

それでもジムリーダー。やはり普通のトレーナーより格段に強く、彼女の相棒であるルカリオは容赦無かった。

彼女の話によると思った通り格闘家らしく、いつも人間相手ではなくポケモン相手に練習をしているらしい。板なら10枚素手で壊せるらしい。なんて人だ。空手か柔道か……いやこの人は空手家の部類だろう。



「いやぁそれにしてもお腹空きましたね!もうお昼時過ぎちゃったけど…アヤさんでしたっけ!?一緒にレストラン行きませんか!?」

「え?いや、さっき食べたばかりでしてっ」


―――ドンッ!!



「……え?なんの音…?」

「何でしょうか……ジムの裏からですね」



突然ジム裏から聞こえてきた物を破壊する音に、スモモおろかジムトレーナーまで反応した。するとジムのアドバイザーが慌てた形相でジムに滑り込んで、大声で叫ぶ。

内容は驚愕するものであった。



「た、大変だ!変な格好してる奴らがジムの裏の非常口を壊しやがった!ジムを占領するって聞こえてっ…!」

「なっ…」



どうやら、今の爆発音はジムの壁を破壊された音らしい。

いや、それよりも変な格好してる奴らとは…… ?思い出すのはついこの前シロナが言っていたことだ。珍しいポケモンを奪って回る連中がいる、と。
ワタルもタイゴも同じようなことを言っていたのを思い出したアヤは不安そうにスモモをチラと見た。

なぜか犯罪集団は揃いも揃って変な格好をしている輩が多い。もしそいつらだとしたなら、やはり自分は運がない。初日から注意されて警戒しなければならない連中と顔を付き合わせているのだから。とりあえず警察を呼んだ方がいいだろうか。アヤはポケギアを出せるように鞄に手をかけた、その時。

丁度その時、後ろからけたたましい叫び声が上がった。



「あいつらよくも俺らのジムをっっーー!!」

「許せません!!せっかくスモモちゃんがこの前リフォームしたのに!全員シバき上げて縄で縛って足に重石くくりつけた状態でリッシコに沈めてやります!!」

「うおおおお許さねぇー!!あんなダッサイ服着た分際で人様に迷惑かけんじゃねぇええッ!!」

「なんて事をっ…!修理いくらかかると思ってるんですか!!この前リフォームしたばかりなのに!絶対にそいつらに払わせてやる…皆さん行きますよ!断じて逃がしてはいけません、一人残らずリッシコに沈み落とせえッッーー!!」

「我らがスモモちゃんの後に続けー!!」

「許すまじ!!」

「出入りじゃーー!!!」


「(いろんな意味であいつらなんて事を……)」



ジムを壊された怒りでジムトレーナー達が瞬く間に暴れ出した!スモモも拳を握り締めて怒りを露にしている。その形相はサ●ヤジンのようだ。

トレーナー達全員を引き連れて現地に全力失踪して行くスモモ達を呆然と見ていた。きっと奴らは捕まったら最後、血みどろになるだろう。あ、いやちょっと待ってあのヌンチャクどこから出したんだろう…。



「南無三……」



まああの気迫を見たらジムも占拠されずに済みそうである。迷惑集団が何人で押しかけているのかはわからないが、だってどう見てもスモモちゃん達鬼の軍勢の方がおっかない。

数分後にはどこからともなく悲鳴が上がるのを、頭に乗ったリオルと怯えながら聞いていた。




ジム裏から悲鳴。

ほとんどポケモン
関係なく制圧されたらしい。






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