ないものねだり
人は自分に無いものを欲する、とはよく言ったものだ
「あ、もうこんな時間…」
「あちゃー、今日は夢中になって遊んじゃったから遅くなっちゃったね」
「そうですねー、まさかポフィン作りであんなに夢中になるとは思いませんでしたよ」
「そうだねー」
目の前にいるアヤちゃんにあって、私には無いものがある
私にはそれが羨ましくて、眩しくて、時に妬ましくも感じてしまう
「それじゃボクは帰ります!」
「うん、気をつけてね!飛行中、変な未確認生命物体を見つけたらまず始めに破壊光線で様子を伺うんだよ!」
「えぇぇぇえ!?」
アヤちゃんには帰る家がある
家に帰れば、きっとシロナさんがアヤちゃんを待っている。極上の夕飯でアヤちゃんを喜ばすんだろう。そこにワタルさんやダイゴさんやレッドなんかが混じれば、きっと楽しい食事会になるに違いない
カイリューの背に乗って、家族に等しい仲間の元へ帰ったアヤちゃん
大切な仲間がいて、帰る場所があるアヤちゃんが羨ましくて眩しくて…どうにも出来ないこの気持ちを蓋をする為に、私は一人渇いた笑いをしながら帰路に戻った
私には無いもの、それは
私を迎えてくれる大切な存在
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傷跡の華