暖かいと感じた
只、久々過ぎて

泣きそうになったんだ



「ほら」

「は、」



何の突拍子も無く自分の両手に小さな小包が乗せられた事に呆然とする。

目の前にいる彼の言葉と共に受け取った、綺麗に包装された小包は何故か贈り物のように感じてならない。そんな小包を見ながら今日何かあったっけ?とミリは記憶の底から根を掘り返すだけ掘り返してみたが、全く分からなかった。

取り敢えず、前日から皆苦い顔をしていたのは知っていた。マツバとミナキが「ミリちゃんは絶対ホウオウの方が素晴らしいと思ってる」「いいやミリ姫は当然ながらスイクンの方が素晴らしいと思っているさ!ミリ姫の手持ちには何たってスイクンが居るんだぞ!」「だからってスイクンの方が好きだとは限らないだろ?仮にそうだとしても僕がプレゼントする等身大ホウオウ人形を見たミリちゃんは途端にホウオウの方が素晴らしいと思うかも知れない」「否、それはないさマツバ。今回私が用意するのはクリスタルスイクンだ。スイクンを手持ちに入れるミリ姫がそんなクリスタルスイクンをプレゼントされて素晴らしいと思わない訳がない!」「ホウオウだ!」「スイクンだ!」「ホウオウ!!」「スイクン!!」…なんてよく分からない会話をしていたのは取り敢えず置いといて、皆がそわそわして(訂正:頭を抱えて)いるのは気のせいではない。

そんな気になりながらも数日を過ごし、忘れた頃にこの小包を渡されたのだ。取り敢えず、この間のマツバとミナキの会話を思い出したミリはこの小包の中を推測してみる。



「……等身大ホウオウ人形?」

「いや何でそうなる。そもそも握り拳の大きさくらいしか無いだろ」

「クリスタルスイクン?」

「嫌がらせか。ミナキだろ!それ絶対あのスイクン馬鹿が言ってたんだろ!?」

「マツバさんとミナキさんがこの間喋ってたよ?」

「やはりか」



あのダブル馬鹿が、と舌打ち気味に呟くレンにミリは首を傾げる。
はて、と謎の箱を見詰めたまま何が何だかわからない顔をしている彼女に気付いたレンはボリボリと頭をかいた。



「やるよ」

「え?」

「今日、お前誕生日だろ?」



あ、と小さく呟いたミリにレンは何だ忘れてたのか、と呆れ気味に彼女の隣にドサリと腰を下ろした。

そういえばもうそんな時季なのかと、それよりもいつ自分の誕生日なんか彼に話したっけと思いながら、いつも冷めていた心がじんわりと暖かな熱で満たされていくのを感じた。
いつもいつも毎度の事ながら、死にそうな旅を続けていた事でそんな誕生日なんてものはとうに忘れていたのだ。心が既にどこかで疲れ切っていたから。どうでも良かったのかも知れない。


それにまさか、祝ってくれるなんて誰が予想するのか。



「暖かい、ね」

「あ?」

「ううん、…ありがとう、レン」

「………どういたしまして。お代は後できっちり請求してやるよ」

「誕生日なのに!!?」

「何か浮かない顔してたからムカついた。……こういう時は、素直に笑って喜ぶのが基本だろ、ミリ」



肩に回された腕にグッと引き寄せられ、バフバフと頭を叩くように撫でられる。

これもレンなりの優しさなのだと充分に理解している。…が、気恥ずかしい事には変わりはない。いそいそと離れようにも固く抱かれている腕にやれやれとミリは肩を落とした。


――――でも、



「……ありがとう」
「…あぁ、」



この暖かさはいつだって自分の欲していたものだから。

久々過ぎて、

涙が出そうになった。



首筋に顔を埋め、小さく笑うレンを感じながらミリは静かに瞼を閉じた。




笑え、お前には一番

笑顔が似合うから


(ふわ、と唇に暖かなものを感じて一緒に芝へと倒れ込んだのはそれから数十秒後)


(おい何だあれはマツバあの二人やけに近くないか顔が)(はははは!絶ち斬りたくなるよ行こうかヨノワール)

(《取り敢えずゴウキさん、あの二人を止めて貰えませんかミリ様の為にも》)(………仕方がないか)




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