彼女のヒールが高いわけ



コツリコツリ


軽く響く彼女の足音



【彼女のヒールが高い理由】



バレンタインに出会った友人、何処か不思議な雰囲気を持ったトレーナーのユウちゃん。
楽しくお茶をして、のんびりお喋りをしながら歩いていたら、ふいにそんな話題となった。



「そういえば、ユウちゃんっていつも凄いヒールの高い靴履いてるよね」

「……そうですか?」



華奢な体を上から下へと眺め、細い脚の先にある靴を見ながらそう言えば、ユウちゃんは同じように視線を辿って首を傾げる。ピコンとフードの耳が揺れた。



「うん、高い!ボクはそんな高いヒールで旅は出来ないよ……!!」

「…………はぁ、」



拳を握って力説しても、ユウちゃんからは緩い反応。ボクにとっての認識と彼女にとっての常識の間には、越えられない壁があるようだ。



「そのヒールって何pなの?」

「7pです」



単純な好奇心から尋ねれば、あっけらかんと言われた答えにくらりと目眩を覚えてしまう。「高っ……!!」と本音を漏らして額をぴしゃりと手で叩いた。



「あれ、でも待ってよ?ユウちゃん身長160以上だよね?」

「まぁ……一応、163pです」

「てことは170に到達してるじゃない何なのそれ背の低い人への当て付け!?嫌み!?あああああもう羨ましいぃぃぃぃ!!」

「落ち着いて下さいアヤさん他意はありません」



荒ぶるボクに冷静なツッコミを入れ、ユウちゃんは困ったように目尻を垂らす。わななくボクを見守り、「ですが、」と言葉を繋げた。



「まあ、最初の内は痛かったですけど……慣れると案外どうってことないですよ?」

「無理無理無理ボクには絶対無理……!!」



こてりと肩に頭を落とし、瞳を瞬かせながら言われた台詞に全力で否定をする。「何だってわざわざ、」と心の底からの疑問を絞り出すような声で問えば、ユウちゃんはふむ、と顎に指をあてて考え込む。そして、くるりと綺麗な孔雀石色の瞳を丸くし、普段の淡々とした口調で言った。



「鍛えてるんですよ」

「え、」

「ヒールの高い靴を履く事によってふくらはぎや指先に負荷が掛かり、歩くだけで鍛えることが出来るんです。常に爪先立ちをして歩いているようなものですからね。これにより対象物を蹴る場合の軸足はしっかりと固定され、威力も数段に跳ね上がり…――――」

「え…え?えぇぇぇ……!?」



「ッハ!」


がばりと身を起こした。



という夢を見たのさ!


「あ、ユウちゃん……」

「アヤさんおはようござ……?どうかしましたか?」

「いやいやいや!何も!!」

「?」




という夢を見たアヤは日頃からどんな妄想をしているのか親ながらに不安になってきた…!
とりあえずユウちゃんはピンヒールで風穴あける事は針に糸を通すくらいに簡単な事はだということ半端ねぇえええ\(^o^)/
素敵な小説ありがとうございました!




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