午後のお茶会


柔らかな日差しと

穏やかな風が吹く


優美なテラスで、あなたと一服



【午後のお茶会】



高価な茶葉の入ったポットにお湯を注ぎ、繊細な持ち手に指を掛けて蓋を閉める。細かな刺繍の施されたポットカバーを被せ、今度はティーカップだ。給湯室から持って来させたお湯でカップを温め、立ちのぼる湯気をぼんやりと眺めながら、私は一体何をしているんだと今更ながらに思った。


執務の最中、妙に落ち着きの無い双子に発破を掛けてみたのが30分前。結局、王は下手な嘘を交えて逃亡し、その補佐には見事に話を反らされてしまった。


それが、何がどうしてこうなった。


「おい、茶はまだか」

「今淹れてるわよ」



確か私は、話を反らした雷帝殿に茶に誘われたはずだ。なのに、どうして私が給仕をしているのだろう。
普段も双子に茶やら軽食やらを運んでいたが、仮にも執務外、プライベートの時間まで給仕じみたことをやらされるとは思いもしなかった。


てっきりメイドさんか誰かが来てくれると思ったのに、と軽くため息を吐き、私はポットカバーの中で蒸らしている紅茶を睨む。
お湯や葉などのティーセット、そしてお茶受けのケーキを運んで来たメイドの子達もそのつもりだったのだろうが、ゼオンはその子達が給仕を始める前に「下がれ」と言ってしまった。そうも端的に命令されては、彼女達が部屋に残ることは出来ない。元王子様がするはずもないから、必然的に私が淹れるはめになったのだ。


人間界で言うところのダージリンに似たこの紅茶は、蒸らし過ぎるとかなり渋くなってしまう。タイミングを誤らないためにも、じっと見張っていなければならない。
紅茶を蒸らしている間、何もしないのでは場が保たないし何より暇だ。仕方ないなと腹を括り、お茶受けとして用意されたケーキを小皿に乗せ、おまけとして飾りなんかを添えてみる。そんな風にかいがいしくやってしまうのは、日頃の行いが身に染みてしまったからか。



ポットカバーを外して中を覗いてみれば、調度良い具合に蒸れた様子。テラスに満ちた紅茶の香りに、ゼオンがぼんやりと遠くを見ていた瞳をこちらに向ける。もうすぐよ、と言いながら紅茶をカップに注げば、そうかと短い返事が聞こえる。

全ての準備が整い、ケーキの小皿と共にカップをゼオンの前に置けば、紫雷の瞳に琥珀色の紅茶が揺れた。



「ねぇ、」
「……何だ」

「どうしてメイドさん達を下がらせたのよ」



ゼオンがカップを口に運ばせたのに倣い、私も紅茶を一口飲む。王宮の茶葉は最高級なだけあって、上品な香りと味は素晴らしいの一言に尽きる。
雷帝殿が紅茶を喉に通したのを見計らい、この際双子に感じた違和感は忘れて違う質問を投げ掛けてみる。パリ、と無意識に放出された静電気が頬を掠めた。



「愚問だな。高名な魔女殿にしては珍しい」


紅茶の香りを楽しむように口許でカップを揺らすゼオンの姿は、30分前に本人が言ったようにかなり絵になる。これで人を見下したような台詞を吐かなければ最高なのだが。


「回りくどい言い方はよして下さらない?」



負けじと他人行儀な口調で切り返せば、ゼオンはふん、と鼻を鳴らす。そして、ニヤリと口許にふてぶてしい笑みを作った。



「お前が淹れた方が旨いからだ」

「…――――え、」



おかわり、と差し出されたカップを思わず受け取る。
今の自分は、きっとぽかんとした間の抜けた表情をしているだろう。だって、私を見るゼオンの顔が、いつになく面白そうな、穏やかな表情を浮かべていたから。



午後のお茶会

雷帝様と魔女様の、ほんの僅かな逢瀬の刻




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そしてまさかの魔女様の小説がぁああああああ!!Act8以降の話がぁあああッッーー!!(ビシャーン!!)メイドを追い払うゼオンとかただ単に邪魔するなと言ってるにすぎなiガフッ!
それにお前が淹れた方が旨いからだなんて…なんて殺し文句ッッ…!!わたくしマジで惚れそうになったですよ……!!
まさかまさかまさかあの8以降の続きが読めるなんて…!そうです今の段階ならこの二人はこんな感じですドツボ入ったぁああぁぁ……!!

ミコちゃん素敵な小説ありがとうございました…!




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