Abnormal Play



特定的な欲求

それがどこまで上り詰めるか



【Abnormal Play】



車外で展開されている爽やかな朝とは掛け離れた、ぎゅうぎゅうの鮨詰め状態。ただでさえ憂鬱な朝の通勤ラッシュ。


(…………えー…っと……)


それに加えて、この、臀部に感じる"何か"。


(あー…これは、もしかしなく、とも……)



押し合いへし合いの電車の中で、ボクは一人冷や汗を流す。



今日の朝も、いつものように「いい加減に起きろこの愚妹がアアアアア!」というユイ兄の声で起床し、文句を言いながらも用意して貰った(理由:殺人的料理センスを持つ妹を台所に近付けさせまいとする兄の保身)朝食を食べ、窓から地響きでもしそうなエンジン音を轟かせながらバイクに跨がる姿を見送る。
きちんと朝食を食べ終えたら、手早く片付けをして身支度を整えて出発。恋人であるレッドと駅で合流し、電車に乗って学校へ。ここまでは普段と変わらない行動パターンだった、が。



(えーっと…傘……じゃないか雨降ってないし。鞄、にしては細いし……えーっ…と………)



最初は勘違いかととも思ったが、やはりそうでは無いようだった。自身の臀部、つまりは尻に何かが這っているこれは、まごうこと無き痴漢行為。



(朝っぱらから何だってこんな目に……)


正直な話、『面倒臭い』というのがボクの抱いた感想だ。今朝もいつもと変わらない、普段通りの一日が始まる筈だったのに、まさか痴漢なんてされるとは。



おしくら饅頭をしているのかと錯覚するくらいに人の乗り込んでいる車内では、いくらボクでも身動きは取れない。出来ることと言えばせいぜいが体の角度を変えるくらいで、その程度の抵抗ではボクのお尻を撫で回す誰かさんの手はしつこく追い掛けて来る。
隣に立っているレッドに助けを求めれば、彼ならすぐに痴漢を撃退してくれるだろう。しかし、そんなことをすれば駅員に突き出す前に実質的な意味で痴漢犯の人生が終わってしまうだろう。


誰かも分からない相手に体を触られるのは不愉快だし気持ち悪いけど、かと言って殺人事件を起こす程の話でも無い。
幸い、痴漢の手はスカートの上から軽く触ってきてるだけだし、この程度なら我慢出来ないこともない。ボク達が降りる学院前駅までの辛抱だ…――――と、身を固くしたその時だ。



「……ッ!!!」



我慢しようと決心したその矢先、痴漢の手がスカートを捲くり上げる。肌に直接感じた指の感触にビクリと肩が跳ね、全身を駆け抜けた嫌悪感に思わず叫びそうなったら、同時に口元に手を押し付けられた。
突然の展開に流石に焦り、力いっぱいに暴れてやろうかと思ったら…くすり、耳元で小さく笑う声。



「…は、え!?レッド!?」

「………静かにしろ」



思わず声に出して名前を呼べば、五月蝿いと言わんばかりの視線を周りから感じる。慌てて既に解放されていた口に自ら手をあて、そろりとレッドのことを見上げてみれば……どこか怪しい、至極楽しそうな彼の笑顔。
スカート下の指の動きは相変わらずで、これはまさか、もしかしなくとも、



「ちょ、まさかレッドが……!?」

「"痴漢プレイ"とやらは良いと、クラスの連中に奨められたんでな」

(えぇぇぇぇぇ…!!?)



思考が追い付かずに呆気に取られているボクを、口の端を持ち上げたレッドにぐいっと抱き寄せられる。周りからしたら『カップルがいちゃついている』程度の光景だろうけど、ところがどっこい、彼の右手は今にも下着の中に入ってきそうなくらい際どい動きをしている。
いつになく爽やかに言われた爽やかさからは掛け離れた発言と、恋人からのまさかのセクハラ行為に頭の中が真っ白になる。なんちゅーことを奨めとんじゃああああああああああ!と、レッドのクラスの三年生達に盛大に文句を言いたくなった。




Abnormal Play




寸でのところで行為を収めた彼の「続きは帰ってから」発言に、くらりと眩暈を感じた。




痴漢するレッドさんは正に堂々たる行為!!きっとこれは痴漢しているというか只のおさわりをしているくらいの感覚では…!だってレッドさんだもの←

帰ったらきっとただでは済まないアヤに合掌←

素敵な小説ありがとうございました!





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