金髪幼女
突然にもその出逢いは突然やってくる時がある。
例えそれがこんな危険な状態でも。
「「「きゃああああッ!!」」」
「うるせえ!!いちいちピーピーうっせぇんだよ!ブッ殺されてぇのか!!」
「うええええんお母さんんんんっっ!!」
「うるせぇっつってんだろガキィイイ!!」
パァン!!
パァン!!
そして発砲する覆面男二人。
窓硝子に玉が貫通して破片が勢い良く砕け散る。そんな大惨事な光景に女性人達は悲鳴を上げに上げ、子供は泣きまくる。そしてまた威嚇する発砲。
アホか、黙らせたいなら発砲するな。不気味な覆面取ってその物騒なもんポケットにしまえ、とパラパラと飛んでくる硝子の破片をアヤは面倒臭そうに払い落とした。はぁ、と不幸が混じったな溜め息を着き、耳の鼓膜が破れそうな発砲音から逃れる為に耳に指を突っ込む。
何でこんな事になったのか。確か自分はコガネデパートに買い物があってレッドと一緒に同行したんだっけ、と頭の隅で経路を辿ってみる。だがデパートに入る前、どこかある一点をじっと見ていたレッドは「先に行け」と言い自分を先にデパートへと向かわせた。レッドの事だ。またバトルか何かだろうと大して気にすることなくデパートに向かった矢先に、これだ。
まさかデパートに強盗が居合わせようとはボクもレッドも誰も思いやしまい。はあ、とまた溜め息。結局目当てのものは無かったしサンダースに置いていかれるわ(只迷子になっただけ)強盗に遭遇するわ。しかもこんな時に限ってサンダース以外は家で留守番と来た。なんたって今日はこんなについてない。
早く切り上げて帰ってくるないかな、とダル気に様子を見るが強盗が切り上げる気配はなく、寧ろ外のギャラリーが多いせいで逃げる事が出来ないのだろう。だったら早く人撃つ馬鹿な事やらかす前にジュンサーさん来ないかな、と明後日の方向を向けば隣から声をかけられた。
「あ、あの!」
「え?」
「えと、大丈夫ですか?さっきからじっと俯いて動かないで…気分とか悪いんじゃ」
「あ、違います。違いますよ!発砲音が煩くて鼓膜ブッチしないように守ってるんですこれ」
「そうなんですか?良かった、にしても迷惑ですよねぇ」
「ですよねー迷惑ですよねー」
周りから聞いたらこんな一大事になんて会話してるんだと怒られてしまいそうな会話も、今なら悲鳴やらで全くその心配はない。
声をかけてきたその子は見た目13、14歳くらいの長い金髪を結んだ小さな女の子だった。兎のように赤い目がきらりと光り、全体的に幼く感じられる。それにしてもその歳でこんなに落ち着いた子を見たのは久々だ。将来大物になる予感を感じながら、少し気になったその子に名前を聞いてみた。
「アヤカって言います!」
「ふむ、アヤカちゃん。ボクと一字多いね。ボクの名前、アヤだよ」
「わ、凄いですね…いきなり出会って一字違なんて奇跡ですよアヤさん」
「あ、何だっけそれ?千分の一の確率だっけ…一億分の一の確率だっけ?」
「えっと…、」
「おい!うるせぇぞ小娘共!!」
「あ、っていうか聞いてよアヤカちゃん!ボクねー今日イッシュ地方に生息するポケモンの、ドレディアって言うめちゃ可愛いポケモンをモチーフにしたビーズキーホルダーを買いに来たんだよ。でも無くてさ…行き損だよー…」
「おい!!聞いてんのか!」
「え?何言ってるんですかアヤさん!まだ8階に沢山ありましたよ!私そこでエルフーンゲットしましたし…エルフーンと並んで人気のあるキーホルダーでしたから、まだ沢山在庫あると思いますよ?」
「おい!お前らっ…!!」
「ママママジで!!?」
「オィィィ…!!」
「マジですマジ!大マジで…」
「おい小娘共ぉお!!舐め腐ってんじゃねぇぞ!!人の話しをっ…聞きやがれぇえええッ!!!」
「「わぁああああ!!?」」
ダンダンダンダン!!
容赦なく発砲された。
互いに足をばたつかせ、足元に向けて放たれたそれに目玉が飛び出そうになる。おいおいお兄さんよぉ当たったらどうしてくれんだ。そんな事を思いながら睨み上げれば、それが気に入らなかったのか男が舌打ちした。
加減を知らない手で腕を捕まれ、「来い!」と引きずり出す。まさかの人質第一号に選ばれてしまったらしい。後ろで自分の名前を呼ぶ彼女を尻目に奥底に隠れたビビり本能が目を覚ます。けれどこの極悪面を見ていると危険なスリルと言うのが変なところを刺激し、ゾクゾクと背中をかけ上がった。あれ、ボクってもしかしたらもしかしなくても、変態?Mッ気がある変態なのか?いや、Mではない。只こう、そのスリル溢れるものが好きなだけだと思いたい。
首を太い腕でガッチリとブロックし、頭にピストル突き付ける覆面男に周囲はどよめく。
サンダースは居ないしさてどうしようか、背負い投げでも久々にかましてやろうかと思っていたのだが。急に店内の窓ガラスが爆発で吹っ飛んだ。
ドオオオオンッ!!と盛大な音と共に砂埃まで吹き荒れる。これには流石に吃驚し、「わっ」と小さな声も漏れる。しかし男達はその過大な出来事に冷静さを失ってしまったのか、叫んで真後ろに居たアヤカちゃんまで人質に取ろうとした。
………が。
「なっ…何だお前はぁああ!!」
「あ」
「……………」
彼女に伸ばされた手は背後に立つ人物により阻害された。
黒い髪の間から見えるその赤い瞳はいつもの見慣れたもので。どうやら先に行ってしまったサンダースも一緒のようだ。安堵して一息着いたが、彼の瞳が自分を映すと途端に殺気が溢れ出す。掴んだその男の腕がメシリと鳴り、ボキリと低い痛々しい音を響かせた。
直後叫ぶ男。
変な方向に曲がった手首を見ると、やはり折られてしまったらしい。突然の出来事にアヤカちゃんは呆然としているが、取り敢えず謝りたいところだ。
すると手首を折られ、再起不能になった仲間を見て自分を拘束していた男が半狂乱になる。ガチ、と引き金に手をかけたそいつに「あ、やばい死にそう」と柄にもなく思ってしまったその時。
ガスリと音を立て男が横なりに吹っ飛んだ。
「や、大丈夫アヤカ」
「ヒッ…ヒビ…!!」
「駄目じゃないか、勝手に離れたりしたら…居ないと思ったら何か巻き込まれてるし、」
俺を歩かせるなんて良い肝してるな。
そう男に回し蹴りを喰らわせた、この少年。何か凄い前髪と碧の瞳を持つ少年は冷やりとする笑顔で洗う。別の意味でレッドより危険。あ、ヤバいこの人サドだ。
「ひ、ヒビキこそ今までどこ行って…」
「え?そこのオニイサンとバトルしてたんだけど何か?」
「いえ、何もありません」
そこのオニイサン、とはきっとレッドの事だろうか。近寄ってくる彼を見ながら顔色を伺うが、至って涼しい顔をしている。怪我は?と聞くレッドにゆるゆると首をふれば安堵の息を着いて腕を引かれた。
「何もないならほら、行くよ」
「えっ…ちょ、待ってよ!あ、アヤさん!またね!」
「あー、気を付けてお家に帰んなねー」
前髪爆発の彼に引きずられるように彼女は去って行った。
金髪幼女
(何だか、彼女も苦労してるんだなぁとか、思った)
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緋月凛様リクエスト
「アヤカ&ヒビキ、アヤ&レッド共演」