しまった。

またやらかしてしまった。



「シャワーズー」

『………』

「シャワーズってばー」

『………』

「ルルー」

『…………』

「…おーい、お願いよ返事してあげてアヤさんの心が木っ端微塵になるその前に」



何このデジャヴュ。

つい最近にこういう状態あったよね、と言う記憶の糸を辿っていく。前はサンダースがいじけた。ボクが置いていったせいでサンダースがいじけた。で、今回はシャワーズがいじけた。しかも約束を破ってしまったという…いや本当にボクのバカ何してくれてんだ。
約束というのは本当にささいな、小さな約束だ。ビニールプールで水遊びしたいと言い出したシャワーズにじゃあ明日ね、と約束をしてしまったのは昨日のこと。だが今日はそれどころじゃなく、すっかり忘れていたボクが帰宅したのは既に時計の針が夜の八時を過ぎていた頃だった。お留守番組の中にシャワーズが居なくて、端の方に空気が入っていないシワシワになったビニールプールが転がっていた。「あ、やべぇ」と今更ながらに思い出した約束に、シャワーズがいつもいじけると決まってその場に居るであろうお風呂場へ直行した。

すると案の定、シャワーズがお風呂場の水が溜まっていない広くはない浴槽の中に、背を向けて丸くなっていた。だがしかし、シャワーズはサンダースと違って一筋縄ではいかない性格をしている。



「ルルー…本当にごめんってばー…」

『………』

「明日必ずビニールプール張ってあげるから…!」

『………』

「お願い返事してボク無言の圧力とかそういうの苦手なんだよ…!アヤさんの硝子のハートが木っ端微塵にブッ!!」



尻尾の尾で顔を叩かれた。



『別にビビりのハートが木っ端微塵になったとしてもールルはちっとも痛くも痒くもねぇですぅ。とっとと微塵になっちまえです』

「シャ、シャワーズさっ…今のちょっと痛っ…」

『痛いように叩いたですから当たり前だろーです。最ももっと強く叩いた方が良いですか。ビビり強くぶっ叩くと気持ちよさ気するですもんねーこの変態ビビり』

「おいぃぃぃぃぃ!!誰ァアアアこの子に変なあられもないこと吹き込んだ奴誰だァアアアア!!」

『違うですか?ビビりは生まれた時からどえむじゃねぇんですか?』

「違う!!断じて違うからね!!それ誰の事言ってるのダイゴさん!?ダイゴさんなの!?」

『んなのどっちでも良いですぅ。だったらルルが立派などえむにシバキ上げてやるから感謝しろですよ。ほら、さっさと尻こっち向けて四つん這いになりやがれブッ叩いてやるですよほーら』



バシーン!



「痛ぁああああああ!!!」



そう、このシャワーズ。性格に大分…いやかなり問題があるのだ。正直メンバーの中でシャワーズが一番扱い辛いというか。取り敢えず、今の彼は怒っている。普段のサドッ気が数段跳ね上がっているところを見ると、相当いじけているようだ。
ああ…またご機嫌取りが大変だな、と思うのは心の中に伏せておく。取り敢えず、普段はとてもイイ子なのだ。只怒るとこんな風にグレるだけ。しかも一回爆発させとけば直ぐに収まる。その後は全力でご機嫌取りしようそうしよう。

するとごめんごめん!と悲鳴に近い声で謝り続けること数秒、バシバシと叩く強さがペシペシと減少した。



『…………ルルはー、楽しみにしてたですぅ。久々だからバリバリ楽しみにしてたですー…』

「いたたっ…えと、ごめんね。明日必ずプール出すから許して本当に」

『…でもー、プールで遊ぶ事より、ルルはアヤに約束破られたことの方が超ムカついたです』

「………ごめんなさい」



いじいじと自分の尻尾を手で弄くるシャワーズが可愛い。でも言わないけど。しゅん、と垂れた頭を全力で撫でれば『痛ぇですビビり』と軽く払われてしまった。酷い。



「あ、じゃあ来週プール行こうか」

『!……本当ですか』

「うん勿論だとも」

『他の野郎はいらねぇですぅ。ルルとアヤだけで良いです経費削減ですー帰って来て自慢して奴らの悔しがる顔とか最高にオモローですよアヤもそう思うですよね?』

「(除け者にしやがった…)え、あ、うん…そうだね…。あ、水着どうしよう。持ってないなぁ…」

『買うならビキニにしやがれですぅ』

「え、何?聞こえなかった。ビキニ?ビキニって言った?まさかこの体型でビキニとか着ろとか言ってるの恥さらしもいいとこだよね」

『別にアヤがまな板なのはみんなよく知ってるです』

「尻尾引き千切るぞー」

『冗談ですぅ』



ビキニがいいですぅ。

(水着はワンピースタイプにした)


シャワーズさんと


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