「華音くーん!居たら返事、」
『はいマスター!お呼びですか!』
「(相変わらず早いなぁ)」
呼んだら背後にいるかの如く、すぐに姿を表すこのウインディは一時期ストーカーなんじゃないかと疑った時がある。
大きな体をものともせず、のしのしと軽やかに早足で歩くこのウインディ。しかも呼べば直ぐに駆け付けてくれるしいろいろと手伝いもしてくれる上に嫌な顔一つしない。これを世間一般的に言えば「理想の忠犬」なのだろう。
何か頼みがあると分かっているのか、お座りして機嫌良さそうにパタパタと尻尾を振っている。このウインディはパーティー一、何かとボクの手伝いをしたがる変わった子だ。いや、別に嫌だとかそんな風には思ってはいない。
只、イイ子過ぎて涙がちょちょ切れるが如く嬉しさが…と言うこと。っていうかぶっちゃけて言うと彼はパーティーの中では癒しな存在だ。何かと皆主人であるボクをなじるし苛めるし何だってんだチクショウ。因みにガーディ時代はマスターマスター、となついてくれてまるでお母さん子のようで本当に可愛かった。今もそのお母さん子は健在だが。
ウインディによるとその主人に尽くす本能は同じ種族なら誰でも備わっているらしい。
「このオーダーされた荷物をね、ちょっと先の民家に届けようと思うんだけど…もう日も暮れるし一緒に着いて来てくれないかなと」
『荷物を?お安いご用です、マスターの為なら』
「あ、いやね、違うんだよ別に幽れ…道中にスタンドが出たら恐いよねとか別にそういう意味じゃないからね」
『………え。幽霊出るんですか』
「やっだ華音くん!いつスタンドが出るって言った!?アヤさんそんなの一言も言ってませーんナイナイ絶対ナーイ!スタンドなんていいいい居るわけ無いじゃん!?」
『ですよね!そうですよね!ではマスターさっさと行きましょうなるべく早く行った方が良いです』
「そうだよー早く行った方がスタンドも出る確率低くなるよーいや別に居ないけどね!」
『……え。やっぱり出るんですか』
「出なぁあああい!絶対出なぁあああい!!」
『(恐いなら恐いってはっきり言えば良いのに…)』
そんな下らないやりとりをする二人(一人と一匹)をサンダース達は遠巻きに見ていた。何だか昔よりビビり…いやチキンに進化している己の主人を見て個々に大丈夫かなぁ…と行き末が不安になる事は取り敢えず伏せておく事にして。
じゃあ行って来るから留守番宜しく!とブンブンと手を振るアヤに、サンダース達はまた個々に返事を返して一人と一匹を見送った。
『乗ってください、その方が早く着く』
「え、本当に?ありがとうーじゃあ楽しちゃおうかな」
『それとマスター』
「ん?」
背中によじ登るアヤを振り落とさないように歩き出したウインディはニコ、と愛想よく笑った。
『大丈夫、何があろうとマスターはしっかり俺が守ります』
「お、随分カッコイイ事言えるようになったね」
『あ、でもスタンドは無理…かな』
「えええええええええええ」
『え、いや、大丈夫ですマスター!その時は夜魅に何とかして貰いましょう元気出して!』
しっかり守ります。
(いくらポケモンでも幽霊はちょっと)
ウインディさんと