「あ、いたいた。蒼ー」
『どうした?』
「ここに置いてあった木の実が…ってええええっ…!」
『木の実ならさっき俺が食べた。…何だ?』
「え、食べたの?……じゃなくて。蒼って本っていうか字、読めるの…?」
『ひらがなとカタカナ限定でなら読めるが…それがどうした?』
お菓子の材料に使おうとした木の実が無くなっていたのに気付いたのは今さっき。甘いのはあれ一つしかなくて、ちょっと困っていた。
注意して居なかったし別に誰か食べたなら食べたで仕方無いが、犯人くらいは確認はしておきたいと思ったボクは、いつもこの近くに居るであろうルカリオに聞いてみる事にしたのだが。予想通り近くのソファに座っていたルカリオの手元には、一冊の雑誌。まさか本なんて読む事が出来るのか…と木の実の事は頭から吹っ飛び、そちらに興味が移ったボクは珍し気にルカリオと本を交互に見る。
知能が高いポケモンは人間に近い能力を持つと言われていたが、どうやら本当らしかった。(じゃあユイ兄とこのミュウツーとかヒカリちゃんとこのエムリットとかも読めるのか?)
「へぇー凄ぉーい!自分で覚えたの?」
『シロナさんとこのルカリオさんが少し教えてくれた』
「ふへーしかもマガ●ン…渋いねぇ」
『漢字は読めないが、ふりがなとが振ってあるからこういう読み物は読める』
「面白い?」
『面白い。退屈はしないし、感性がな』
「いいねぇ知的で。あ、ねぇねぇちょっと声に出して発音してみてよ」
『ん、別に良いが。………コウイチさん、わたしたちはもうおわったのよ。なにもかもおわったんだわ。だからもうおわりにするの。だってあなたにはモモカさんがいるじゃない。いや待ってくれシズカさんまだおれたちはこれからじゃないのか。モモカさんはただのきんじょつきあいなんだ。だからまだあきらめないでくれシズカさ』
「ごめんもういいや」
え、昼ドラ?昼ドラか何か?明らかにドロドロなトライアングルの関係を息継ぎ無しで言い切ったこのルカリオさんどうなの?
しかも何気喰わぬ顔をして全ての台詞を棒読みにするルカリオさんもこれ恐いよ。っていうか何であんなにつっかえずに言えるの凄い。違うのを頼むと促すとルカリオは無言でページを捲った。
『そのてはおれのたいないをかきまわすようにしんしょくし、ついにふくぶにあるそのぞうきをつかんだ。そしてそいつはなんのためらいもなくおれのそれをいきおいよくひきずりだし、』
「ちょっと待って待って待って!何でそんなグロいのを…!マガ●ンってそんなんだっけ!?もっと他に気持ちよく聞ける作品は…!!」
『ふむ、気持ちよく聞ける作品か。なら………ほら、べつにいいじゃないあしたまでみんなかえってこないんだから。そんないけませんおじょうさま。わたしめはただのしつじです。しつじがおじょうさまとそんなこういにおよぶなど…。だいじょうぶよ、ばれなければかんけいないわ。だからほら、なにしてもかまわないからはやくさわってきもちよ』
「わぁああああああああああ!!!」
『あれ、何だ気に食わないか?』
「気に食わないも何も大問題だよ何てもん朗読してんのぉおお!!」
『それはアヤが気持ちよく聞ける作品をって言っていたからじゃないか』
「ちちちち違っ…!そそそそういう意味じゃなっ…!!!」
『ハッハッハッハッハ』
「え、ちょ、これもしかして分かってやってたの!?ねえ!?」
『ハッハッハッハッハ!』
「ああああああチクショオオオオオ腹立つぅうううう!!とにかくこれは没収!教育に果てしなく悪いよこんなのがマガ●ンだってアヤさん認めませんよ!これからはこっちのジャ●プ読みなさい皆これで少年の階段を歩いて行くんだよォオオ!!」
これで少年の階段を歩いて行く。
(ルカリオの愛読書はジャ●プになりました)
ルカリオさんと