ガタッ
「………………」
深夜二時。丑三時。
それは最も人外のモノが動き出す時間だ、と言われているらしい。いいいいいやね、アヤさんそんな幽れ…違った、スタンドなんて信じないんだけどもね。あ、いや、あの森の洋館に居たあのお二人以外しかスタンドは認めないんだけどね。ゆ…スタンドなんてそんなホイホイ居る訳ないじゃないナイナイ絶対ナーイ。あの某漫画のスタンド使いでもあるまいし、仮にスタンド出たとしてもいくらアヤさんでもスタンドは扱い切れませんよ!
ガタ、カタカタ、
「…………」
深夜二時。それはスタンド達が暴れだす時間らしい。
さっきまで布団の中で爆睡していたが、突然目が覚めた。喉が渇いてリビングへと冷蔵庫の中を物色しようと足を運んだ…が。いや、あの、何か…。
カタカタ、キィィィ…、
「……………」
何か、イマセンカ?
スタンド?いやいやさっきも言ったけどまさかそんなん絶対ナーイ。スタンドは森の洋館のお二人しか認めません断じて。あんな怖いのが他にも居ると思いたくない。ゴキ…じゃなかったGとレッドの逆鱗とか絶対零度の視線より恐いのがスタンドとかそんなん絶対無いからね。ナイショだからね、
ギィィィ………、
「…………」
扉 ガ 開 イ タ。
え?ちょ、まっ、ええっ?っていうかほら、アレだよ。誰かイタズラしてるんだよきっと。確かベッドにはレッドが寝てたし…って言うかレッドがそんな下らない事する訳ないな。その他サンダース達も一緒に丸まって寝てたし、可能性のあるムウマージだって目開いて足元で熟睡して………………………………………、あれ。じゃあダレ?
ギィィィ…と閉めた筈の扉が開く音に、ボクはペットボトルのキャップを外したままガチガチに固まる。心臓が煩い。まるでロストタワーの時のようだ。
そしてヒヤリ、とした何かが首筋に触れ た。
「ぎゃああああああああああ」
『夜魅でありんす』
「わあああああぁぁああああ」
『アヤ、夜魅でありんす』
* * * * * * * * *
「びびびびびっくりしたっ…!!チクショウまたやられた…!!」
『いやまあそんなに驚いてくれるとわっちも嬉しいですねィ。ゲゲゲゲゲ』
「笑い事じゃねーよ…!本当に心臓が口から顔出すところだったんだからねもし口からこんにちはだったらどうすんの…!」
『それはそれで見てみたいですねィ』
ゲゲゲゲゲ、と笑うムウマージはふよふよと浮かびながら隣でペットボトルを抱えて飲んでいる。ちなみに部屋は電気が付いていて明るい。
ボクの悲鳴を聞き付けたのか、寝室にいる連中(サンダースを頭に)が何だ何だとリビングに押し寄せて来たのはつい一分前くらいの事。予想以上の悲鳴にレッドまで叩き起こしてしまったが、ムウマージが隣に居るのを見て「またか」と言った表情で溜め息を着いた彼は、眉間に軽く皺が寄っていた。「あまり恐がらせてくれるな」とムウマージに一言注意したレッドは、リビングの小さな電気を着けて寝室に戻って行った。早めに戻って来いよ、と言い残して。
「何でこうも毎回毎回…」
『毎回ではないでありんす。周一の割合でありまさァ』
「周一ねぇ…何かもう毎日脅かされてる気が…楽しいかいムウマージさん…」
『夜魅でありんす。楽しいもなにも楽しいですねィ。毎回毎回初々しい反応が新鮮でありんすから』
「……………」
『何度脅かしてもその反応、わっちはたまらないんでありんすゲゲゲゲゲ』
「(このスタンド風情が…)」
少し殺意を覚えた。
「ハァ…もうボク寝るからね。リビングの電気消して来てね夜魅様」
『言の手つかまつりしんした。…あ、アヤ。そこの角、自殺した女の幽霊いるでありんす』
「キャアアアアアアアアアアァアアアア」
『嘘でありんす』
「ぁああああ貴様ぁぁぁぁぁ」
夜魅でありんす
(ぶっちゃけ幽霊はわっちが殆ど片付けてるでありんすから、アヤの近くにはいないでさァ)
ムウマージさんと