「色、だ。あいつの“色”が心地好くて、惹かれたんだろうな」



そう、例えば色。

例えば蒼。

例えば、そのものがアヤだったとして。

色に惹かれた。深く、けれど透き通った蒼い耀きを持った色彩に惹かれた。それが自分と違い、コロコロと波の形を変える様が見ていて楽しいと思った。根にある色は変わらないが、その変化を見ていて新鮮だと思った。

自分に無いものだと、そう思った。



『………まあ、アヤはただ騒がしいだけだけどな』

「それが良かった」

『…何でアヤ?騒がしい奴なら周りに腐るくらい居るだろ。あの茶髪の緑とか、そもそもあんたは顔は良いんだ。騒がしくてアヤよりも綺麗な女は星の数ほど居る。あんたが見ないだけで、女なんて選り取りみどりな筈だ』

「…お前は俺が嫌いなようだな?」

『…別にそうじゃねえよ。あんた程の大したタマが何でアヤだけに執着するのか気になっただけだ』



自分に無いものだと思った。

ぶっちゃけポケモン以外に興味がない俺が、それが珍しくて面白半分観察を続けていたら別のものが生まれた。気付くのに随分時間がかかってしまったが、興味半分珍しさ半分が全く違った別の感情に切り替えられていた。

それが、とても心地が好かった事に気付いた。確かに騒がしい女ならいくらでも腐るくらい居るが、その騒がしさとはまた違った別のもの。雑音は嫌いだが、その騒がしさは嫌いではなかった。寧ろ心地好い音楽並みの。



『アヤがそこそこあんたとやりあうくらいに強かったからか?』

「……強い?確かに、そこらのジムリーダー程度と比較すればそこそこ出来るな。…アヤくらいなら30秒ジャストで組み敷ける」

『それは俺らに対しての挑発と見て良いのか?それともアヤの貞操の危機が脅かされる一歩手前と見て良いのか?』

「どっちも、だ」



ただ、その内貰う。

そう無表情に言い切った俺に、目の前の、アヤの相棒である奴はクッと眉を寄せる。



「俺の今年の目標、アヤが俺無しじゃ生きられないようにすることだ。心も身体もお墨付きで、な」

『(…今のままで充分だろ)』

「……強さ、もある。だが、それ以前に惹かれていたモノがある」

『へえ?』

「けれど今はそんな一つのものを好いている訳じゃない。全部だ。全部他人に無いものが揃ってるからこそ、アヤを好いた。第一が嘘を付かないバカ正直なところが気に入ってる。あいつに惚れたのはそれだ」

『(……こいつ)』

「…これは俺と、俺達メンツとの約束なんだが。お前達は強い。強いが、…“あの時”みたいにどうしようもならん時もあるだろう。だからその時は俺が、俺達がアヤを、お前達を護る」



だから心配するな、と。まさかの宣言にポカリ、とサンダースが豆鉄砲を喰らったように固まった。



『……俺達はお前達に護られなきゃいけねぇ事態には、まだ落ちちゃいねぇよ』

「万が一、だ」

『フン。……………アヤが、何でアンタなんかに惚れたのかなんとなくわかったよ』

「へえ?それは是非聞きたいな」

『…良いこと教えてやるよ。アヤはあんたが思ってる以上、かなりベタ惚れしてるぜ?』



その言葉に僅かに瞳を見開いたが、そんなの当然だ。



「知ってる」



勝ち誇るように笑みを浮かべた。



あいつのどこに惚れた。

(色、という耀き)


レッドさんとサンダースさん


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